前例のない二つの裁判ケースは何を示唆?

今年から米国の政治環境は大幅に変化した中で、前代未聞のエピソードが次から次に報告されている。最近の二つの裁判ケースの例だけを挙げても、米国では過去には見られなかった正常ではない事態が起きている。その一例はドナルド・トランプ大統領に指名されたメリーランド州の連邦地方裁判所の判事は15人の裁判官に対して提起した前例のない米国司法省の訴訟を却下したことである。ユタ州では、共和党が違法の選挙区編成地図を作成したとして、裁判官が地図を書き換えるよう命令した。いずれのケースも判事らが民主的規定から脱線する動きに歯止めをかけるために、戦っていることを示唆している。

連邦地方裁判所の判事は、党派的な選挙区割り操作を防ぐために有権者が設置した独立委員会をユタ州共和党議員らが弱体化させ、安全策を回避したため、違法であるとして州議会の境界線を迅速に再編成する必要があるとの判決を下した。ダイアナ・ギブソン判事は25日、共和党が多数派を占めるユタ州議会に対し、新たな連邦議会選挙区図を9月24日までに作成するよう命じた。共和党によって違法に作成されたユタ州の選挙区図は、人口が最も密集している民主党有権者が多数派であるソルトレイク郡が同州4つの選挙区に分割されており、これにより、共和党が大幅に票数を獲得できるシステムになっている。ギブソン判事の判定は、このユタ州の選挙区図を来月書き換えるよう命令しているため、その結果、民主党が座席を取り戻す可能性があると分析されている。この判定は、選挙区編成に対する論議は両党にあり、共和党が一方的に彼らの党を有利にするための選挙区の編成を行うことはできないと判断したことを示唆した。通常、各州は国勢調査後10年に一度、選挙区図を作成しているが、現在複数の州は、5年で政治的利益のみを目的として書き換えを行っており、最近の政治的紛争は前代未聞である。

新たな選挙区割り地図を作成する州は、2026年中間選挙の候補者が1月上旬に立候補届出を開始する前に作成する必要がある。しかし、訴訟や上訴が見込まれる場合、新たな選挙区割り地図の採択を2028年まで延期する可能性があるという。いずれにしても、ギブソン判事の判定は、民主党が来年米国下院議会の過半数を獲得するために3議席を獲得する必要がある中で、中間選挙では共和党が敗北する傾向があることも含めて、共和党は中間選挙で議席を失う可能性があるという。今年は、トランプ大統領がテキサス州の共和党に対して、米国下院議会で5議席を追加できるよう選挙区の編成を行うよう要請していたため、しばらく葛藤が続いた後、21日に可決した。テキサス州の動きに応じて、カリフォルニア州の知事ギャビン・ニューサムは、米国下院議会の同州の5議席を追加するという計画に沿って、素早い行動を開始した。インディアナ州、オハイオ州、フロリダ州、ミズーリ州の共和党議員らも彼らに有利になるよう選挙区割りを改訂する予定である。現在のところ、共和党のこの動きに強固な挑戦を行なっているのは、カリフォルニア州のみである。このような州での選挙区割り操作の紛争に米国最高裁が関与する可能性は低いと見られている。なぜなら、2019年に米国最高裁は、党派的なジェリーマンダーの申し立ては連邦裁判所の管轄外であり、州が判断すべきであるとの判決を下したという事例がある。

次に、連邦判事は26日、米国司法省がメリーランド州の連邦地方判事15人全員に対して提起した前例のない訴訟を棄却した。ワシントン・ポストの報道によると、この訴訟は、移民が強制送還手続きに異議を申し立てる審理を求める中で、同州での強制送還を2日間停止する措置を無効するよう司法省が求めたものである。2020年にトランプ大統領によって裁判官に指名され、同年9月15日から、バージニア州西部地区連邦地方裁判所に所属しているトーマス・カレン連邦地方判事は、書面意見の中で、トランプ政権が不法入国者の強制送還に猛烈な勢いで取り組む中で提起したこの訴訟が継続されれば、危険な法的膠着状態が生じると述べた。連邦司法の権限が問われるだけでなく、政権高官が証言録取や機密性の高い内部文書の提出を求められる可能性もある。

今回の紛争において裁判長から特別に任命されたカレン判事は37ページの意見書で、「行政は広範な網を張り巡らせ、政府の調整機関の重要な一部である司法機関全体とその主要職員を前例のない、そして潜在的に破滅的な訴訟に巻き込んだ」と述べた。カレン判事は訴訟を却下するにあたり、トランプ政権の当局者や報道官らが「全国の連邦地方判事を『左翼』、『リベラル』、『活動家』、『過激派』、『政治的志向』、『ならず者』、『常軌を逸した』、『言語道断で熱心すぎる』、『違憲』、『不正行為者』」など、裁判官を軽視するような表現を用いたことを批判した。また、カレン判事は「政府の協調部門間の緊張は我が国の憲法制度の特徴ではあるものの、それに反する判決を下した個々の裁判官を中傷し非難するための行政府のこのような協調的な取り組みは前例がなく残念なことです」と記述した。

要するに、トランプ大統領に指名されたバージニア州連邦地方裁判所のトーマス・カレン判事は8月26日に、メリーランド州の連邦裁判所判事全員を民事訴訟の被告として指名した前代未聞の米国司法省による訴訟を却下したという事である。この訴訟は、強制送還が差し迫っており、メリーランド州連邦裁判所に人身保護令状請求を申し立てた移民に対して、強制送還の手続きを営業日の2日間自動的に一時停止したものである。司法省は、その命令が違法であり、議会の意図および最高裁判所の判例に反すると主張したが、カレン判事は、判事を告訴することは裁判所の命令に異議を唱える適切な方法ではないとして却下したということである。メリーランド州を管轄する第4巡回控訴裁判所は、このようなケースでは2週間延期する方針をとっているため、カレン判事は、メリーランド州連邦裁判所は「事実上、連邦控訴裁判所のやり方を借用した」と述べ、2日間の延期は「遥かに控えめな措置」に思えると述べた。そして、選挙区編成のケースでは、保守州のユタ州で、地方裁判所の判事が共和党に有利な選挙区割の地図を作成した議員らに対して、9月に書き直しを命じたことも前例がない。ユタ州の展開は、テキサス州とカリフォルニア州と同様に、他複数の州でも2026年の中間選挙で両党が下院議席を獲得する可能性を最大化するために選挙区の書き換を始めていることを示唆している。

トランプ政権下では、常識、伝統、慣例、合法性、法と民主主義の遵守、「法の上に立つものはいない」などの正常な観念がほとんど感じられない言動が日々注目されている。例えば、トランプ政権はリベラルの都市に対して軍隊を派遣しているため、米国を独裁者が支配する国に導くのかとの懸念を引き起こす中で、トランプ大統領は25日「私は独裁者ではない」と言った。大統領執務室で行われた80分間の記者団とのやり取り中で、大統領は既に首都ワシントンDC の警察を連邦政府の管理下に置いているが、連邦政府による取り締まりを強化すると宣言した。大統領はこの日、多くのアメリカ国民が独裁者を望んでいると示唆し、多数の人々が『もしかしたら独裁者の方が好きなのかもしれない』と言っている」と記者団に語った。大統領は「私は独裁者が好きではない。私は独裁者ではない。私は優れた常識を持ち、賢明な人間だ」と述べた。そして、国旗を焼く者に対して訴追する大統領令に署名した。この国旗に関する大統領令は、米国最高裁の歴史的な判定に挑戦していることを示唆している。1989年のテキサス州対ジョンソン事件で、最高裁はアメリカ国旗の焼却は憲法修正第1条で保護されている「象徴的言論」の一形態であると判定した。同年に米国議会は「国旗保護法」を可決し、国旗の焼却を違法とした。1990年ジョージ・H・W・ブッシュ政権下による合衆国対アイクマン事件で、最高裁は憲法修正第1条に基づく言論の自由の侵害として国旗冒涜を禁じる連邦法は違憲であると判定した。

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