I Was Dick Cheney’s Cardiologist. Trump Has Not Looked Well, and We Should Know Why.
The New York Times : Aug. 12, 2026
この記事はジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領ディック・チェイニー氏の2期在任中を含め、心臓専門医を27年間務めたジョナサン・ライナー医師が、トランプ大統領の健康は良くないと判断していることに関連しています。同医師は、幾つかの点で80歳の米国大統領の健康状況を米国民が知る必要があると言います。歴代大統領の幾人かは、彼らの病気を秘密にしており、大統領は自身の健康状況については一般的に透明性がなく、今日もその傾向は続いていると指摘しています。
27年間にわたり彼の心臓専門医を務めたジョージ・ワシントン大学の医学・外科学教授であるライナー医師は最初に、「ホワイトハウス在任中、ディック・チェイニー氏の心臓疾患は、決して国家機密などではなかった」と述べています。「彼はステント留置や除細動器の植え込みを必要としたほか、不整脈や脚の血栓症の治療も受けていました。2001年に胸部へ除細動器を植え込んでからは、ウエスト・ウィングの執務室を訪れる人々に、メーカーから提供された機器のサンプルを頻繁に見せていました。 自身の健康状態についてチェイニー氏が見せた率直さは、米国の政治家としては異例であった」と言います。
また、幾人かの歴代大統領の健康状況は秘密であったとし、その例を挙げています。例えば、大統領在任中に秘密裏にがんの手術を受けたのはグロバー・クリーブランドであるとし、その手術は、「プライバシーを最大限に確保する」ため、ヨットの上で行われました。この話題は2022年9月18日に当ブログでも紹介致しました。また、4期目のフランクリン・ルーズベルト大統領は、車椅子を使用し始めた最初の時期に、その事実を公表しませんでした。また、4期目の選挙戦に直面していた時期に、彼は重度の高血圧やうっ血性心不全(severe hypertension and congestive heart failure)に苦しんでいましたが、国民には大統領の健康状態が「あらゆる面で極めて良好(excellent in all respects)」だと伝えられていました。二期目の再選に挑戦していたジョー・バイデン大統領は、ドナルド・トランプ氏との討論会で、風邪の為に気力がなかったことから、「ホワイトハウスが大統領の衰えを隠蔽しようとしていた(had attempted to conceal the president’s decline)のではないかという懸念」を引き起こしました。そして、既に2回入院しているミッチ・マコーネル上院議員が今年「入院した後、数週間にわたって職務を離れた理由についてほとんど詳細を公表しなかった」と指摘しています。
6月に80歳の誕生日を迎えたトランプ氏は、現在の任期が終わる頃には、米国史上最高齢の大統領となります。5月に行われたトランプ氏の健康診断後、主治医のショーン・バーバベラ医師は、大統領が「極めて良好な健康状態を維持している。数多くの高レベルな会合や公務、定期的な身体活動を含む多忙な日々のスケジュールが、全体的な健康維持に寄与し続けている」と述べました。 ホワイトハウスによる「健康である(his overall well-being)」との説明に反して、「この1年間、大統領の様子が優れないように見える場面が何度かありました。私はトランプ氏の主治医ではなく、公表された記録に目を通しただけですが、トランプ氏は恐らく米国史上、最も多くの写真を撮られている大統領(probably the most photographed president)であり、様々な身体的不調(a variety of physical ailments)は容易に見て取れます。両手の大きなあざ、脚のむくみ、そして起きているのが辛そうな様子が見られたこともあります。また、理由は不明ですが、高度な画像診断を受けたこともあった」と言います。
最高司令官である米国大統領には「比類なき権限が与えられているにもかかわらず(Despite the unparalleled power afforded to the president)、大統領自身が職務遂行能力を有していることを証明する正式な義務(to certify his fitness for duty)は存在しません。これは誤りです。軍人、シークレットサービスの捜査官、民間航空機のパイロット、スクールバスの運転手、そして航空管制官に至るまで、誰もが定期的に、業務を遂行するのに十分な健康状態にあることを証明しなければなりません。大統領の年次健康診断の結果を公表するという現在の慣行はニクソン政権下で始まりましたが、それはあくまで慣習にすぎず、正式な義務ではありません。」更に、「歴史が示す通り、その結果は必ずしも信頼できるものとは言えないのです。」とは言うものの、大統領の健康に関する全ての詳細を公表する必要があるわけではありません。「敵対勢力に悪用されかねない(could be exploited by an adversary)病歴の一部を伏せておくことは適切です。2007年、チェイニー副大統領の除細動器を交換した際、私はその機器の新しい無線機能が副大統領にとってのセキュリティ上の脅威(a security threat)になると判断し、その情報を公表しませんでしたが、最終的にはメーカーにその機能を無効化させることができた」と述べています。
ジョナサン・ライナー医師は「大統領の健康状態や職務遂行能力を評価する」為の「最善の解決策は、合衆国憲法修正第25条であるとし、同条は、議会が行政機関から独立した委員会を設置することを認めているため、今年4月、ジェイミー・ラスキン下院議員がまさにそのような議会委員会を設置するための法案に取り組んだと述べています。「理想的には、こうした委員会には、大統領の定期健康診断のデータだけでなく、健康上の懸念が生じた際に行われる診察結果も検証する権限が与えられるべきでしょう。今日そのような委員会が存在しているなら、トランプ氏の健康に関して以下のような医学的疑問を明らかにできたはずです。そして、これらすべての疑問に対する答えを、国民は知る権利があります」と指摘しています。
1. バーバベラ医師の最近の報告書によると、「大統領は22人の専門医による診察を受けた(the president was evaluated by 22 consultants)とされています。政府高官に対する最も徹底的な健康診断であっても、これは異例の多さです。なぜこれほど多くの医師が招集されたのでしょうか(Why were so many physicians summoned)。また、彼らの専門分野は何だったのでしょうか。」 2. トランプ氏の手にはしばしば目立つあざ(prominent bruising)が見られますが、ホワイトハウスはこれを、頻繁な握手やアスピリンの常用によるものだと説明しています。握手による外傷という説明は説得力に欠けます(has never seemed plausible)し、左手もしばしば同様に変色している理由の説明にはなりません。また、なぜ大統領は医師が通常推奨する量の4倍ものアスピリンを服用しているのでしょうか」 との疑問を提起しました。
3. 「昨夏、大統領の足にむくみが生じ、予定外の診察が行われました。大統領の主治医はこの問題を「慢性静脈不全症(chronic venous insufficiency)」と説明しました。これは高齢者によく見られる症状で、足の静脈にある弁の機能不全(leaky valves in the veins of the legs)によって起こります。通常、この症状は長い時間をかけて徐々に進行するものです。しかし、そのわずか数ヶ月前に行われたトランプ氏の包括的な健康診断(comprehensive physical examination)では、バーバベラ医師は足のむくみを記録していませんでした。もし、それが事実なら、そのむくみは定義上慢性ではなく、急性のものだったことになります。急性の脚のむくみは、心臓病や腎臓病などの問題に起因する可能性があり、遥かに重大な所見(a far more significant finding)となり得ます。この重要性の違いの差がなぜ生じているのでしょうか?」
4. 大統領はしばしば、「起きているのが辛そうな様子(struggle to stay awake)を見せる」ことがあります。これは医師が「過度の日中眠気(excessive daytime somnolence)」と呼ぶ状態の兆候です。大統領執務室での行事中にも時に見られるこの問題について、5月に行われたトランプ氏の包括的な健康診断後の報告書では言及されませんでした。トランプ氏は「夜型として知られています(the president is a renowned “night owl”)が、この眠気は比較的新しい症状のようです。大統領の症状にはいくつかの原因が考えられ、中には放置すると深刻な合併症を招く恐れがあるものもあります。大統領の医療チームは、この問題の原因を特定したのでしょうか?また、どのように対処しているのでしょうか?」 5. 「2025年10月、トランプ氏はウォルター・リード国立軍事医療センターで、心臓と腹部の高度な画像検査を受けました。大統領の主治医は検査の理由について、『問題の早期発見、全体的な健康状態の確認、そして長期的な活力と機能の維持を確実にするため』と曖昧に説明しました。医師は、検査で異常は認められなかったと述べました。この検査を行うきっかけとなった特定の症状や臨床上の出来事(a specific symptom or clinical event)があったのでしょうか?」
6. 大統領の「過去の健康診断報告書では、脱毛を防ぐ薬であるフィナステリドを服用していることが公表されていました。しかし、直近の健康診断後の報告書では、この薬についての言及はありませんでした。この点に関するワシントン・ポスト紙の問い合わせに対し、ホワイトハウスは「現在の報告書は、現時点で公表することが臨床的に適切と判断されたすべての薬剤を反映している」と回答しました。「大統領が脱毛治療薬を服用しているかどうかは、実質的に重要な問題ではありません。より重要な問いは、ホワイトハウスが公表しないと判断したトランプ氏に処方された薬剤があるのかどうか」ということです。 7. 大統領は「自身の認知機能検査(cognitive testing)の成績が良いことについて語りました。しかし、トランプ氏が言及している『モントリオール認知機能評価』は、時計の絵を描いたり、ラクダを識別したりするといった単純な質問を含む、簡便かつ基本的な選別方法に過ぎません。この検査は通常、患者や家族から懸念が示された際に行われるものです。なぜ大統領はこれほど頻繁にこの検査を受けてきたのでしょうか?また、より詳細な神経認知機能評価(more sophisticated neurocognitive assessments)は行われているのでしょうか?」など、様々な疑問を提起しています。
最後に、ジョナサン・ライナー医師は、立憲君主制の国である英国のバッキンガム宮殿はチャールズ国王の癌やその治療法について、多くの詳細を公表しなかったことに言及し、代議制民主主義の米国では指導者の健康状態や、国を導く能力について、国民は知る必要があるが、長い間事実を知らされていないと指摘しています。同医師が提起した7項目は、米国民がほとんど、トランプ大統領の健康状態を知らないことを示唆しています。国土安全保障を脅かさない範囲において、知る必要があるというライナー医師の意見に同意できるものがあります。元憲法学者の下院民主党議員ジェイミー・ラスキン氏が、今年4月14日に提起した法案は多数の民主党議員が共同提案者になっていますが、共和党主導の委員会では、何の進歩もありません。ラスキン氏の報告によると、「合衆国憲法修正第25条第4項は、大統領がその職務上の権限および義務を遂行できない」状態にあると宣言し得る恒久的且つ独立した超党派の機関として、大統領の職務遂行能力に関する監視委員会の設置を提案しています。