撤退命令を受けたシリア北部での米軍: By National Review
トランプ政権はシリアの大統領バッシャール.アサドヘの対応および、シリア内戦への対応において、オバマ政権と比較して顕著な違いがある。トランプは先週、米軍が望んでいなかったシリア北部からの撤退を命令した。その直後に、トルコはシリア北部を侵略し、ロシアはシリアで主導権を握り、ISISの囚人は拘束されていたシリア北部の各地にある全てのキャンプから逃亡しており、米軍はクルド人を裏切る結果になったトランプの決定に怒りを表明している。過去の政権より、トランプ政権はシリアも含めて、中東政策で一貫性がないことが問題であると指摘されている。議会超党派のリーダーは、深刻な懸念を表明している。
シリアの大統領バッシャール.アサドヘの対応
オバマ政権:オバマ大統領は最初、アサド大統領との和解政策を推進したが、2011年にシリアで始まった内戦への政府の対応が暴力的であった為、アサド大統領の辞職を求めるようになった。トランプ政権:2017年3月、アサドを権力から引き下ろすことが重要ではなく、長期的なアサドの地位はシリアの国民が決定するべきであると発表した。
シリア内戦への対応
オバマ政権:シリアでの紛争が激化していた2011年8月、オバマ大統領はアサド大統領に辞任を求める声明を公表した。米国は、2011年の秋に、シリアに対する経済制裁に関する決議案を可決するよう国連安全保障理事会に強く要請した。ロシアと中国はこの提案を阻止する拒否権を行使した。2012年5月までに、親アサドの群衆による攻撃に直面した事件も含めて、シリアの米国外交官や米国の大使館は深刻な安全保障の危機に直面した。同年には米国大使館はシリア内戦のために一時閉鎖された。2012年12月、オバマ大統領はシリアの野党連合をシリア国民の正当な代表として公式に認めた。2013年からオバマ政権の最後の年まで、CIA先導の国防総省下の支援プログラムにおいて、約10,000人の反乱軍を訓練し、武装を援助した。
トランプ政権:2017年1月、トランプ大統領はイスラム教徒の米国入国を禁止する大統領令を発行した。これにはシリアからの難民も含まれていた。2017年7月にトランプは反政府勢力に対するCIA支援を段階的に廃止するよう命じたと報告された。2018年4月、シリアでの化学攻撃があった後、米国、英国、フランスは、化学兵器を保存していると見られたアサド政権の建物をミサイル攻撃した。2018年12月トランプ政権は具体的な期限なしに、シリアに駐在している数千人の米軍の全面撤退計画を発表した。この為、国防総省の長官ジェイムス.マティスは意見の違いにより辞職した。2019年10月、トランプ大統領はシリア北部から米軍を完全に撤退することを命じた。
この結果、トルコはシリア北部を侵略した。シリア北部から米軍が撤退した後、ロシアは15日、シリア政府の重要な同盟国であるモスクワが「安全保障の空白を埋める」ため、ロシア軍がシリア北部の町マンビジの近くでトルコ軍とシリア軍の間をパトロールしていると発表した 。ロシア当局はモスクワがアンカラ(トルコの首都)とダマスカス(シリアの首都)の間の「軍事対立を防ぐために働いている」と述べた。ロシアの発表は米国が15日にマンビジから米軍を撤退させたと述べた為であると言われている。米軍のスポークスマンであるマイルズ.カギンズ大佐は「連合軍はシリア北東部からの意図的な撤退を実行しており、我々はマンビジの外にいる」とツイートした。少なくともシリアの一部から米国が撤退した為、8年間紛争が続いているシリアでの支配権が変わったことを意味する。これは「ある超大国が別の大国に影響を譲った」ことになる。一方、イスラム国家の過激派グループによる復活を恐れた何万人もの民間人は逃亡を追い立てられている。
また、広範な米軍関係者と国防当局者は、トルコの軍事攻撃に直面しているシリアのクルド人に対する支援を停止したトランプ政権に「深い苛立ちと怒り」を表明していると6人以上の米軍と国防当局者がCNNに語ったことを15日に伝えた。少なくとも、一部の米軍高官は米国がISISと戦うために、援助する役割を与えられたクルド人に対して、トランプがどのように扱ったかをよく知っていると一人の米国当局者が語った。別の国防省の高官は、トランプが侵略にもっと強く反対し、クルド人に対する攻撃を止める努力を怠った為、政府は公的にトルコの作戦に一貫して反対していたにも関わらず、トランプはトルコに青信号を与えたと語った。
また、最悪のニュースは何百人ものISISの囚人がトルコの攻撃中に、シリア北部にある全てのキャンプから逃げていることである。14日のCNBCによると、クルド人と米国当局者はシリア北東部のキャンプに拘束されている少なくとも 10,000人のISISの囚人が逃亡した。約2,000人は外国の戦闘者であり、残りはイラク人とシリア人である。トルコのジェット機がこの地域を爆撃している時、それらの囚人を収容する責任のある役人の多くは、彼ら自身または家族を守ることに追いやられているとクルド軍が語った。トランプ大統領がトルコとシリアの国境地域からの米軍撤退を発表し、その地域の責任をアンカラに引き渡した直後に、トルコ軍がシリアへの攻撃を拡大するというニュースが伝えられた。トルコ政府は、クルド人の戦闘部隊を「安全保障上の脅威」であると見ており、トルコ国内で数十年にわたる反乱を引き起こした別のクルド人グループと同一視していることが、この結果になっているようである。
トランプ大統領がこの行為を「認可した事への驚きは、それが忠実なパートナーに対する裏切りであったという理由だけでなく、アメリカの同盟国を揺さぶった。彼らを更に驚かせたのは、トランプの行動が完全に予測不可能であった」ことである。米軍を撤退することは「イスラム国家(ISIS)に占領された領土を奪還する地上戦の要であった米軍支援のクルド人民兵が攻撃される事とISISが復活する危険性がある」と14日のニューヨーク.タイムス(NYT)が伝えた。トランプ大統領が中東政策では、頻繁に立場を変え、一貫性が全くないことが問題である。今年だけでもシリアで二件を含めて、この地域でのトランプの政策には「一連のフリップ.フロップ(風見鶏的変化)がある」とNYTは指摘している。イラク国家安全保障の元アドバイザーであるモワファク.アル.ルバイエは、過去の政権での米国政策立案者は、彼らの意図について明確であったが、トランプの「一貫性がなく、急速に変化する中東の立場は、既に不安定な地域に新たな混沌の要素を注入し、同盟国が米国の位置付けとそれがどの位の期間続くのかを推測しなくてはならない」と述べた。ルバイエはトランプについて、「この男はすべて感情的です。予測不可能です」と語った。
保守系の複数のメディアは、上院多数派のリーダーであるミッチー.マコーネルがシリア状況を 懸念して声明を二回発表したと伝えた。マコーネルはシリア紛争に起因する正当な安全保障と、トルコがシリアのクルド人パートナーを攻撃する結果、これまで進歩があったISISとの戦いに対するシリアでの危機に「重大な懸念をしている」と声明を公表した。マコーネルが先週に引き続き、外交政策において2回も懸念を発表したのは非常に珍しいことである。下院議長のナンシー.ペロシはマコーネルからの深刻な声明を受けて、シリアでの幾つかの懸念を軽減するための決議案に投票することを促した。