今日8月1日のトップ・ニュースはジョー・バイデン大統領の交渉が成立し、ロシアに一年以上拘束され、最近スパイ容疑で16年間の懲役刑を課せられていたウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の記者エヴァン・ガーシュコビッチを含めて、多数のアメリカ市民が開放されたことである。これはプリズナー・スワップと呼ばれ、ロシアで拘束されていた米国市民を含めて、複数国の西洋人とロシア囚人との交換を意味する。バイデン大統領は今日午後早期、ロシアに拘束されていたアメリカ市民が自由の身となったことを報告した。ロシアで拘束された人々は想像に絶する苦痛の体験をしている。
バイデン大統領は1日正午15分過ぎ、ホワイトハウスのブリーフィング・ルームからのスピーチで、「ここに集まった家族全員にとって、これは信じられないほどの安堵です。そして、長い間この日を祈ってきた全国の友人や同僚にとっても安堵です」と語った。また、米国の同盟国であるドイツ、ポーランド、スロベニア、ノルウェー、トルコの合意なしには「実現できなかった」と述べ、「彼らは皆、立ち上がり、我々を支持してくれました。大胆かつ勇敢な決断を下し、拘束されていた囚人を釈放し、アメリカ人を帰国させるための支援を提供してくれました」と語り、釈放された米国市民の名前も表明した。
同日報告したニューヨーク・タイムスによると、合計24人の囚人は8月1日、複数国間の人質交換により解放された。これはロシアと西側諸国間の交換としてはここ数年で最も大規模なものの一つである。ロシアから釈放された人達はアメリカ人3人(WSJの記者 エヴァン・ガーシュコビッチ、アルス・クルマシェバ、元海兵隊のポール・ウェラン)及び 他の西側諸国の6人の囚人、反政府および人権擁護活動家の4人、 アレクセイ・ナヴァルニとつながりのあるロシア人3人である。そして、米国やドイツを含む西洋諸国が開放したロシア人は、ベルリンでチェチェン分離主義者を暗殺したヴァディム・クラシコフを含む8人の囚人である。結極ロシアは16人を釈放し、西洋諸国は8人を開放するプリズナー・スワップに成功した。
待望の米国市民および米国在住者の釈放
WSJの記者 エヴァン・ガーシュコビッチ(32歳)は2023年3月、モスクワの東約850マイルにあるロシアの主要産業拠点、エカテリンブルクへの取材旅行中に、覆面をした治安当局の職員に拘束された。その直後彼はスパイ容疑で起訴された。ロシアの検察当局は起訴状で、ガーシュコビッチが戦車などの兵器を生産するロシアの軍事産業施設に関する「秘密情報」を入手するために「綿密な共謀手段」を使ったと非難した。ガーシュコビッチ、同氏の雇用主、米国政府は容疑を否定していた。 7月19日、ロシアのエカテリンブルクの裁判所は、わずか3回の審理で終了した迅速な裁判で、ガーシュコビッチに厳重警備下で懲役刑16年の判決を下した。西側諸国の記者に対するこのような重罪の宣告は1986年以来初めてである。

WSJの記者 エヴァン・ガーシュコビッチ Photo credit : ABC News
元米国海兵隊でイラクに派遣されたポール・ウェラン(54歳)は2018年12月28日モスクワのメトロポール・ホテルで友人の結婚式に出席していた時に逮捕された。以前に何度かロシアを訪れていた彼は、ロシア人の友人から旅行の写真を収録したフラッシュ・ドライブを受け取った。その後、ロシアのエージェントが急襲し、そのドライブにはロシア軍の機密情報が入っていると主張した。米国、カナダ、英国、アイルランドの国籍を持つウェランは厳重警備下で、16年の懲役刑を宣告され、そこでは工業用衣類の縫製を強制され、他の受刑者から少なくとも1回暴行を受けた。ウェランは、他の米国人が入れ替わる一方で彼のみが取り残されたことについて繰り返し訴えていた。

元米国海兵隊ポール・ウェラン Photo credit : New York Post
そして、女性が含まれていたことは更に衝撃的である。今日紹介されるまで、一般的には知られていなかったロシア系米国人のアルス・クルマシェバ(47歳)は、米国政府から資金援助を受けている放送局ラジオ・フリー・ヨーロッパ・リバティーの編集者である。彼女は、ロシア軍に関する「虚偽の情報を流した」罪でロシアの刑務所で6年半の刑を宣告された。この容疑は、ウクライナ戦争に対する批判を封じ込めるためにクレムリンによって広く利用されている。クルマシェバは、夫と2人の娘とともに20年以上プラハに住んでいた。彼女はモスクワの東約500マイルにある故郷カザンへの旅行中に逮捕された。最初に彼女はアメリカ国籍を申告しなかったことで罰金を科され、その後「外国代理人」として登録しなかったとして起訴され、公判前に拘留された。2023年12月、彼女はロシア軍に関する虚偽の情報を流した罪でも起訴された。この容疑は、クルマシェバが編集し、ウクライナ侵攻に反対したロシア人40人を特集した本に関連していた。

ロシア系米国人のアルス・クルマシェバ Photo credit : The New York Times
他のヨーロッパ人の中で、米国全国放送のニュース番組のインタビューで知られるようになったウラジミール・カラ・ムルザ(42歳)はロシアのベテラン活動家である。ロシア系英国人で米国永住者のカラ・ムルザはワシントンでロシア政府高官による人権侵害を罰するため制裁措置を講じるようロビー活動し、クレムリンの怒りを買った。同氏は、ロシア政府による毒殺未遂事件を2度生き延びたが、その2度とも臓器不全で危篤となり入院した。彼は反逆罪で懲役25年の判決を受けた。これは、現代ロシアの野党政治家に言い渡された判決としては最長である。彼は2024年、獄中で執筆し、ワシントン・ポスト紙に掲載したコラムでピューリッツァー賞の論説賞を受賞した。

ウラジミール・カラ・ムルザ Photo credit : Tomorrow’s Affairs
ロシアが開放したドイツ国籍の囚人
また開放された囚人の中には十代の若者も含まれている。ドイツ生まれのロシア人高校生ケビン・リックは2023年に国家反逆罪で4年間の懲役刑を宣告された。ロシア検察によると、19歳のリックはロシア軍の配置転換の写真を外国の政府代表に送っていた。犯行当時、リックはロシア南部の町マイコプの学校に通う10代の若者であった。ドイツ国籍リコ・クリーガーは、6月にベラルーシの裁判所でテロなどの罪で死刑判決を受けた。ロシアのメディアによると、この曖昧な事件で、ドイツ赤十字社に勤務していたクリーガーは、ベラルーシの鉄道線路を爆破した爆発物を仕掛けたとして告発された。クリーガーはベラルーシ国営メディアに対し、ウクライナの特別機関の指示に従って行動していたと語った。 火曜日、クリーガーは、クレムリンの最も親密な同盟国であるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領から恩赦を受けた。
モスクワ市裁判所は2023年3月、政治学者のディーター・ヴォロニンに対し、国家反逆罪で厳重警備による13年以上の刑務を言い渡した。ロシア系ドイツ人のヴォロニンは、2021年2月に拘留され、外国人に機密情報を渡したとして国家反逆罪に問われ、厳重警備された刑務所で22年の刑を宣告されたロシア人ジャーナリスト、イワン・サフロノフの事件に関与したとして起訴された。サフロノフの弁護士は、同氏が仕事で公開されている情報のみを使用していたと述べた。ドイツ国籍のパトリック・シェーベルは、ハンブルクからイスタンブール経由でサンクトペテルブルク空港に到着した際に拘束され、麻薬密輸の容疑で告発された。ロシア国営通信社タス通信によると、捜索の際、彼の荷物の中に大麻入り6個入りの「フィンク・グリーン・ゴールドベア」1箱が見つかった。彼は釈放された時点でまだ有罪判決を受けていなかった。ロシア系ドイツ人のゲルマン・モイジェスは、ドイツやその他のEU諸国でロシア人が居住許可を取得するのを支援していた弁護士である。5月末、サンクトペテルブルクの自転車運動の指導者でもあるモイジェスは、国家反逆罪で逮捕され告発された。
ロシアの反政府者と人権擁護活動家
ロシアの野党政治の長年の活動家であるイリヤ・ヤシン(41歳)は、キエフ近郊のウクライナの都市ブチャでロシア軍が犯した残虐行為について「虚偽の情報を流した」との罪で有罪判決を受け、2022年12月に懲役8年半の判決を受けた。以前はモスクワの地区の1つで市議会議長を務め、多くの反クレムリン抗議活動に参加した。アレクセイ・ナヴァルニの死後、ヤシンはロシアの野党指導者の中で最も人気のある一人とみなされている。アンドレイ・ピヴォヴァロフ(42歳)はロシアの野党政治家で、特にサンクトペテルブルクで活動していた。2022年7月、ピヴォヴァロフは、望ましくない組織に関与したとして、4年間の懲役刑を宣告された。望ましくない組織とは、反ロシア派団体を非合法化するために導入された法律用語である。加えて、ロシア最古の人権団体の一つであるメモリアルの主要メンバーで、ベテラン活動家であり人権擁護活動家のオレグ・オルロフ(71歳)、ロシアの平和主義アーティストで、2023年11月にスーパーマーケットに小さな反戦メッセージを書いた値札を残した罪で2022年4月に逮捕され、懲役7年の刑を宣告されたアレクサンドラ・スコチレンコ(33歳)らは、国内の反戦意見をすべて抑圧しようとするクレムリンの犠牲者である。
ナヴァルニと関係のあるロシア人
ロシアのウファ市にあるアレクセイ・ナヴァルニの事務所の責任者であったリリア・チャニシェワ(42歳)は、2021年11月に逮捕され、過激派組織に参加したとして告発された。2023年6月、裁判所はチャニシェワに懲役7年6ヶ月の判決を下した。4月、裁判所は彼女の判決を9年6ヶ月に修正した。シベリアの主要大学都市トムスクにあるナヴァルニの事務所の責任者であったクセニア・ファジェエワ(32歳)は、2020年、親クレムリン派の候補者を破り、トムスク市議会議員に選出された。2023年12月、ロシアの裁判所は、ロシアで過激派として非合法とされているナヴァルニの政治組織に所属していたとして、彼女に懲役9年の刑を言い渡した。シベリアのバルナウル市にあるナヴァルニの事務所の責任者であったヴァディム・オスタニンは2023年7月、ロシアの裁判所がナヴァルニのロシア全土での政治ネットワークに違法したため、過激派グループに関与したとして告発され、9年の刑務を宣告された。
西洋諸国が開放したロシア市民
ロシア国籍のワディム・クラシコフ(58歳)は、2019年にベルリン中心部の公園で大胆にも白昼チェチェン分離主義者を暗殺した罪で2021年にドイツで終身刑を宣告された。ドイツの検察当局は事件で、クラシコフがロシアで最も強力な治安機関であるロシア連邦保安庁に勤務していたと示唆した。ドイツの裁判官は、殺害はロシアのウラジーミル・プーチン大統領の命令によるものだと示唆したが、クレムリンは関与を否定した。 2月に放映されたインタビューで、プーチンはクラシコフを「愛国心により、ヨーロッパの首都の1つで盗賊を殺した」人物だと称賛した。また、アルチョム・ドゥルツェフとアンナ・ドゥルツェフの夫妻は、ロシアのスパイが他国の一般市民を装うソ連時代の計画であるロシアの「不法移民」プログラムに参加していると考えられている。法的に結婚しているこの2人は、水曜日にスロベニアの裁判所でスパイ行為と文書偽造の罪を認めた。トロムソ大学の研究者であるミハイル・ミクシンは、ロシアのスパイとしてノルウェーの法執行機関によって逮捕され特定された。2022年2月にポーランドでロシアのスパイとして逮捕されたパベル・ルブツォフ(42歳)は1982年にモスクワで生まれたが、9年後にスペインに移住した。ロシアのスパイとして告発されたが、容疑を否認し、自分は単なるフリーランスのジャーナリストだと主張した。
米国で逮捕された個人
米国で逮捕されたロシアのハッカーであるロマン・セレズネフは、5,000万ドル規模のサイバー詐欺組織で重要な役割を果たし、ハッキング計画を通じて銀行から900万ドルを詐取した罪を認め、懲役14年の刑を宣告された。ウラジスラフ・クリュシンは、米司法省が「930億ドルのハッキング取引計画」と名付けた計画の一環として、企業の非公開収益記録にアクセスしたロシア人ハッカーである。2021年にスイスで逮捕され、同年後半に米国に引き渡された同氏は、昨年9月に連邦裁判所で懲役9年の判決を受けた。クリュシンは計画への関与を否定している。ワディム・コノシェノクは、ロシアの防衛部門のために米国企業から軍用グレードの技術を入手しようと共謀したとして2023年に告発された5人のロシア人のうちの1人である。彼は、KGBの後継機関であるロシア連邦保安局の工作員であると告発されており、2022年12月にエストニアで逮捕され、米国に引き渡された。
最後に、この報告で注目すべきことはバイデンは高齢であるため、記憶力、判断力、認知力など頭脳及び肉体も高齢化していると攻撃され、大統領選の競争から撤退したが、歴史的に最大規模の複雑な国際的プリズナー・スワップの交渉に大成功したことは、彼らがバイデンを過小評価していたことを示唆している。バイデンは、最も困難であると見られているウラジミール・プーチン下のロシアで拘束されていた複数の西洋諸国から16人を開放し、ロシアが望んでいたとされるロシア人8人を釈放することで囚人交換を問題なく達成した。バイデンはロシアだけでなく、少なくともドイツを含む5カ国とも交渉したことを示唆した。そして、歴史的な捕虜交換を仲介したトルコの協力は多大であったことを示唆している。プーチンが2022年2月に開始したウクライナ侵略に反対する反政府の活動家は逮捕および告訴され、真実を伝える報道陣は、虚偽の情報を公開したというロシアの懐疑的なパターンがある。毒殺または暗殺を行うプーチンの独裁政治と立ち向かった反ロシア政府活動家、ジャーナリスト、学者、人権擁護活動家などを救済したバイデンおよび彼の政権の行動と功績は賞賛されるべきである