
Photo Credit : The Tablet 2025年1月15日大統領執務室にて
来週月曜日に就任式を迎える第47代米国大統領ドナルド・トランプの就任式には、米国最大の富豪者であるイーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスが出席するという。彼らは、トランプと協力し合うことに積極的であると見られている中で、ホワイトハウスを去る第46代米国大統領ジョー・バイデンは、15日東部時間午後8時からの告別演説で寡頭政治の台頭とハイテク産業複合体の危険性を強調した。これは、「軍産複合体」の危険性について警告した第34代米国大統領ドワイト・アイゼンハワー(1953 – 1961)の有名なスピーチを回想させるものであり、一握りの富のパワーの危険性、ハイテク産業複合体の多大な危険性と有望性、憲法改革の必要性、気候変動の警告、バイデン政権の功績などについて語った。
寡頭政治台頭の危険性を警告
バイデン大統領はごく少数の超富裕層の手に権力が集中していること、彼らの権力の乱用が抑制されない場合に危険な結果が伴うとして、「非常に懸念していることについて国民に警告したい」と述べた。ホワイトハウスの公開文書によると、同氏は寡頭政治台頭について次のように述べている。
今日、アメリカでは、極端な富、権力、影響力を持つ寡頭政治が形成されつつあり、文字通り私たちの民主主義全体、基本的な権利と自由、そして誰もが成功するための公平な機会を脅かしています。 その結果はアメリカ全土で見られます。そして、1世紀以上前にもそれを見てきました。しかし、当時のアメリカ国民は強盗貴族に立ち向かい、トラストを破壊しました。 彼らは富裕層を罰しませんでした。彼らは富裕層に代償を払わせただけでした。他の誰もが従わなければならないルールに従ったのです。労働者は公平な分け前を得る権利を獲得しました。ご存知のとおり、彼らはこの取引に巻き込まれ、それが私たちを、世界がかつて見たこともないほど大きな中流階級と最も繁栄した世紀を築く道へと導いてくれました。そして、私たちはそれをもう一度やらなければなりません。過去 4年間、私たちはまさにそれをやってきました」と語った。また、「民主主義においては、権力と富の集中には別の危険があります。それは団結感と共通の目的を蝕みます。不信と分裂を引き起こします。民主主義に参加することに疲れ果て、幻滅感さえも与え、人々は公平なチャンスがあると感じません。
ハイテク産業複合体の台頭に懸念を表明
バイデンは「テクノロジーにおけるアメリカのリーダーシップは比類のないものであり、人々の生活を変えることができる比類のないイノベーションの源であることも明らかです。私たちは、テクノロジー、権力、富の集中の危険性を同様に認識しています。ご存知のように、アイゼンハワー大統領は退任演説で軍産複合体の危険性について語りました。彼は当時『誤った権力の悲惨な台頭の可能性』について警告した。それから「60年が経った今、私は我が国にも本当の危険をもたらす可能性のあるハイテク産業複合体の台頭についても同様に懸念しています。 アメリカ人は、権力の濫用を可能にする誤報と偽情報の雪崩に埋もれつつあります。報道の自由は崩壊しつつあります。編集者は姿を消しつつあります」と述べた。また、事実確認をしないと発表したザッカーバーグに言及し、ソーシャル・メディアがファクト・チェックをしない場合、「真実は、権力と利益のために語られる嘘によって覆い隠される」ことになる為、「私たちは、子供たち、家族、そして民主主義そのものを権力の濫用から守るために、ソーシャル・プラットフォームに責任を負わせなければなりません」と語った。
人口知能の多大なリスクと機会
また、バイデンは、経済、安全保障、社会、そして人類にとって、「癌を撲滅するという私の呼びかけに応える可能性さえある」人口知能(AI)は米史上最も重大な技術であるが、重大な可能性とリスクをもたらすと述べている。非常に重要な安全対策が十分でない場合、「AIは私たちの権利、生活様式、プライバシー、仕事の仕方、国家の防衛方法に新たな脅威を生み出す可能性があります。私たちは、AIが安全で信頼でき、すべての人類にとって良いものであることを確実にしなければなりません」と述べている。そして、「AIの時代には、国民が統治することがこれまで以上に重要であり、自由の国として、アメリカはAIの開発で世界をリードしなければならなりません。今後数年間、大統領、大統領府、議会、裁判所、自由な報道機関、そしてアメリカ国民はこれらの強力な勢力に立ち向かうことになります」と語った。
改革の必要性
バイデンは幾つかの分野で改革が必要であると述べ、⑴ 税制改革:億万長者に最大の減税をするのではなく、彼らに公平な税金を支払うよう求めるべきである。人々はできるだけ多くの収入を得るべきであるが、同じ規則に従い、公平な税金を払うべきである。⑵ 闇資金の排除:選挙運動の寄付金の背後に隠れた資金が政治に利用されることを禁止する必要がある。⑶ 倫理基準の改革:最高裁判所の最も強力な倫理改革に18年の任期制限を制定する必要がある。⑷ 議員に対する倫理:全ての議員は就任中に株式取引を禁止する必要がある。⑸ 大統領の免責改正:大統領は誰も、在任中に犯した犯罪から免れることはできないことを明確にするため憲法を改正する必要がある。大統領の権力は制限されており、絶対的なものではなく、そうあるべきではない。
気候変動の危険性
バイデン大統領は、多くの人々が家を失った米史上、最悪の壊滅的なカルフォルニア火災に言及し、気候変動の危険性を再認識する必要があると警告し、「今、気候変動の存在の脅威はかつてないほど明らかになっています。カリフォルニアからノース・キャロライナまで、国中を見渡してみてください」と語った。そのために「世界史上、最も重要な気候およびクリーン・エネルギー法に署名し、現在、世界の他の国々がそれを模倣しようとしています。この法律は機能しており、将来の雇用と産業を生み出しています。ご存知のように、私たちは環境保護と経済成長のどちらかを選ぶ必要はないことを証明しました。私たちは両方を行っています」と述べた。しかし、「強力な勢力は、権力と自分たちの利益のために、抑制されない影響力を行使して、気候危機に取り組むために私たちが講じてきた措置を排除しようとしています。私たちは、未来、私たちの子供や孫の未来を犠牲にする脅威があってはなりません。私たちは前進し続け、より速く前進しなければなりません。無駄にする時間はありません」と述べた。
国内外政策のバイデン政権の功績
バイデンは、米国が「100年に一度のパンデミックを乗り越えるため」に尽力してくれた不可欠な労働者の回復、安全を守る軍人と救急隊員の英雄的行為、権利と自由のために立ち上がる活動家の決意を見たことは「私の人生の栄誉でした」と述べた。バイデンは、彼が経済危機で職を失うことより、現在、何百万人ものアメリカ人は今や「仕事の尊厳」を得ており、何百万人もの起業家や企業が新しいビジネスや産業を生み出し、アメリカ人労働者を雇用し、アメリカの製品を使用していると語った。そして、バイデン政権は「新しい道路、橋、きれいな水、すべてのアメリカ人のための手頃な価格の高速インターネット」など、アメリカの新時代を切り開き、歴史上最大のインフラ近代化の1つを達成し、国内で半導体を生産することで、半導体工場とそれらの仕事をアメリカに戻し、「何千もの雇用を生み出している」と述べた。また、「メディケアに何百万人もの高齢者の処方薬価格を下げる交渉権を与え、30年で最も重要な銃器安全法を可決し、暴力犯罪を50年ぶりの低水準に抑えることで、ようやく子どもたちと家族を守るための対策を講じることができた」と語った。更に「有毒物質にさらされた100万人以上の退役軍人とその家族に対する義務を果たし、家族に医療や教育給付などを提供している」と報告した。しかし、「私たちが一緒に行ってきた」業績の「完全な効果を感じるには時間がかかるが、種は蒔かれ、成長し、今後数十年にわたって開花するでしょう。国内では、1,700万人近くの新規雇用を創出しました。これは、1期のどの政権よりも多くなっています。これまで以上に多くの人が医療を受けています」と述べた。外交政策では「NATOを強化し、ウクライナは依然として自由であり、米国は中国との競争で優位に立っており、他にも多数の成果があります。アメリカ国民のために私たちが共に成し遂げたことをとても誇りに思います」と語った。
平和的政権移行の努力と国民への感謝
約半世紀、公務に奉仕したジョー・バイデン大統領はスピーチの最後の段階で、「私は新政権の成功を祈ります。なぜなら、私はアメリカが成功することを望んでいるからです。 だからこそ、私は平和で秩序ある権力移行を確実にし、模範となる力で主導権を握るという義務を果たしてきました。アメリカが今後も成功できる立場にあることに疑いの余地はありません。最後に、アメリカ国民の皆さんに永遠の感謝を申し上げます。50年間公務に携わった後も、私は断言します。私は今でも、この国が掲げる理念、つまり制度の強さと国民の性格が重要であり、それを維持しなければならない国を信じています。今度は皆さんが守る番です。皆さんが炎の守り手となりますように。信念を貫いてください。 私はアメリカを愛しています。皆さんも愛しています。 皆さんに神のご加護がありますように。そして神が私たちの軍隊を守ってくださいますように。この栄誉に感謝します」と述べ、17分間のスピーチを閉じた。
最後に、ジョー・バイデンは、2021年1月に47代大統領として就任した時、8年後にこの告別演説を披露する予定であったと言われている。しかし、昨年下半期から、心身共に衰えを懸念し始めた民主党同盟者の説得によって、二期目に挑戦することを辞退しなければならない結果となった。50年間も、上院議員(1973―2009年)、副大統領、そして大統領として公務を全うする責任のために一筋に生きて来たバイデンが最後に国民に向けたスピーチには、政界から去り、82歳の一市民となるという表現できない侘しさが感じられると共に今後もアメリカを見守るという決意も潜んでいることを示唆した。そして、一部の富豪者が、必要以上に大統領の政策に影響を与えようとしている危険性、AIの強力な危険性と機会、トランプ政権の成功を祈り、米国民に民主主義のプロセスに関わり続けるよう呼びかけたことは、バイデンが真の愛国者であることを示した。