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米国保健福祉省の長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアは、「アメリカを再び健康にする」とのスローガンにおいて、種子油が本当に体に悪いと主張している。ソーシャル・メディアでは、種子油は「有毒」であると主張している人達もいる。彼らは、ニキビ、体重増加、癌、不妊症など、あらゆる症状の原因を種子油のせいにしている。専門家はどのように述べているのだろうか?
種子油とは何か?:種子油は、トウモロコシや大豆などの野菜の種子から抽出された脂肪を、熱と化学溶剤で精製したものである。種子油は1800年代後半に生産されるようになり、それ以来、種子油の利用は大幅に拡大した。 1961年、心臓病への懸念が高まる中、アメリカ心臓協会は飽和脂肪酸の代替として、植物油などの多価不飽和脂肪酸の使用を推奨した。そして1980年代には、多くのレストランが植物油を使った調理を始めるようになった。
種子油に対するMAHA運動の懸念は何か?:今年2月13日に公開された諮問委員会によると、近年、種子油が健康に悪いという考えはソーシャル・メディアで広まった。それは主に、ドナルド・トランプ大統領によって保健福祉長官に指名されたロバート・F・ケネディ・ジュニアが推進している「アメリカを再び健康にする(MAHA)」運動に基づいている。MAHA運動に関わる多くの人々は、種子油について懸念を表明しており、ケネディは、これらの油によってアメリカ人が「知らないうちに毒されています。種子油は、食品に含まれる最も不健康な成分の一つです。全身の炎症など、あらゆる深刻な病気と関連しており、私たちの健康全体に影響を及ぼします」と主張している。MAHA運動に関連する多くの健康専門家や有力者は「嫌いな8」の種子油であるトウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、ブドウ種子油、大豆油、ヒマワリ油、ベニバナ油、米ぬか油について懸念を表明している。しかし、これまでのところ、種子油に関する研究結果は様々であり、一部の専門家は種子油に関する懸念は誇張されていると指摘している。種子油に関する研究結果には一貫性がなく、一部の専門家は種子油に関する懸念は誇張されていると指摘している。
専門家は種子油に関してどのように述べているか?:ニューヨーク大学の栄養学者、分子生物学者で名誉教授のマリオン・ネスルは「動物性脂肪の代わりに植物油を使うのが健康に良いという証拠はかなりある」と言う。食品薬研究所の所長であるダリウシュ・モザファリアンは「人々が私たちの食べ物の品質について本当に心配し、それが病気の原因になっていることを理解しているのは素晴らしいことです」と語った。しかし、モザファリアンは、植物油は比較的健康に良いという証拠があると述べ、「動物性脂肪は白パンよりは健康的だが、種子油よりは健康的ではない」と言う。タフツ大学栄養学教授のアリス・リヒテンシュタインは、「アメリカの健康問題の原因を特定の栄養素に絞り込みたくなる気持ちは分かりますが、食生活全体を考慮する方が有益です。確かに、魚を多く摂取する食生活は心血管疾患のリスク低下と関連しています。魚を食べる人は活動的で、喫煙量も少なく、健康状態の改善につながる他の要因も備えています」と述べ、魚を多く摂取する食生活は飽和脂肪酸が少なく、一価不飽和脂肪酸が多い傾向にあると説明した。
スタンフォード予防研究センターの栄養学研究ディレクター、クリストファー・ガードナーは、批評家が種子油について語るとき、「彼らが本当に求めているのはオメガ6、オメガ3のことだと思います」と述べ、オメガ6脂肪酸は危険であり、炎症を悪化させてさまざまな慢性疾患を引き起こす可能性があるとされる、少なくとも2000年代にまで遡る考えを指している。ガードナーによると、ほとんどの脂肪は体内でエネルギーに変換される。「私たちの脂肪のごく一部、つまりオメガ6とオメガ3は、ホルモンのような物質に変換されます」と彼は述べ、これらの脂肪酸は血圧、血管拡張、血液凝固、血中トリグリセリド値調節の役割を果たしており、これらはすべて炎症反応に関連するプロセスであると付け加えた。ガードナーは「オメガ3脂肪酸はオメガ6脂肪酸よりも炎症性が低いです。オメガ6脂肪酸には炎症に何らかの形で寄与する副産物もあるが、全体的な影響は炎症を促進するものではありません」と言う。ガードナーは「長年、砂糖や塩分、チップスやジャンク・フードを控えるように言ってきました。もし突然、それらに含まれる種子油が健康を害すると告げられれば、間違った理由で食べ過ぎてしまうのをやめることになるでしょう。とても喜ばしい事です」と述べた。
種子油は本当に体に悪いのか?:ハーバード大学付属マサチューセッツ総合病院の栄養士、アリソン・ケインは、種子油は体に悪いとの主張を「ボガス(虚偽)情報」であるとし、その理由について説明している。特に、キャノーラ油と大豆油に関する誤った情報は10年以上前からインターネット上で広まっており、その詳細は誤解を招きやすく、混乱を招くことがよくあると指摘している。「患者さんから、ソーシャル・メディアで種子油は有毒で、様々な病気を引き起こす可能性があるとの主張があるので、種子油を避けるべきかどうか尋ねられます」と言う。しかし、種子油自体が不健康というわけではない。重要な事は、どのように使うか、つまりどのような種類の食品と組み合わせるか、そしてどれだけの量を摂取するかであると指摘している。なぜ、種子油が健康的であるかと言う点について数十年にわたる研究は、⑴ 種子油は主に不飽和脂肪酸を含んでおり、飽和脂肪酸を含バター、チーズ、肉などの動物性脂肪より、心臓発作や心臓病による死亡リスクが低下することが証明されている。⑵ 種子油は、必須オメガ3脂肪酸の主要な野菜の供給源であるα-リノレン酸(ALA)が含まれている。EPAやDHA(脂の乗った魚に含まれるオメガ3脂肪酸)と同様に、ALAには抗炎症作用など、心血管の健康に良いとされる様々な作用がある。⑶ キャノーラ油には、植物に自然に含まれる化合物であり、コレステロール値を下げる効果があるとされるフィトステロールも含まれている。
しかし、批評家は種子油にも好ましくない特性があるという。⑴ 種子は粉砕された後、ヘキサンで油が抽出されるので、有害であるという。⑵ 種子油にはオメガ6脂肪酸が含まれており、その中には、体内でアラキドン酸に変換され、炎症を促進する分子の構成要素であるリノール酸も含まれており、慢性炎症は心臓病などの深刻な健康問題に関与している。⑶ 大豆油とキャノーラ油は安価なため、ファストフードや外食、惣菜などでよく使われている。しかも、工場やレストランでは、作業の過程で頻繁にオイルを新鮮なものと交換しないため、不飽和油を繰り返し高温で加熱すると、トランス脂肪酸などの有害物質が発生する。これは、揚げ物の頻繁な摂取と心臓病との強い関連性に寄与している可能性が高い。
アリソン・ケインは、これらの主張に対して、例えばヘキサンに関して言えば、ヘキサン(種子や野菜から食用油を抽出するために、また特殊用途の溶剤や洗浄剤として使用される)はガス状では有害であるが、油の加工中に蒸発するため、液体状のヘキサンはほとんど残らないと述べている。さらに、平均的な人が油や他の食品に残留する可能性のあるこの化学物質の痕跡量を摂取する量は、ガソリンの蒸気など他の発生源からの曝露量に比べればごくわずかであると述べている。さらに、ファストフードに含まれる加熱された種子油の危険な化合物は、フライド・ポテトやチキンなどの揚げ物などには、高脂肪、添加糖、塩分、そしてカロリーも含まれている。これは、平均的なアメリカ人の食生活に含まれる他のカロリー源がにも当てはまる。ケインは「種子油は私たちの食料供給の中に潜んでおり、主にチップス、クラッカー、クッキー、その他の焼き菓子など、袋入りの塩辛い、あるいは甘いスナック食品に含まれている」と述べている。ケインによると、リノール酸に関する懸念は科学的に裏付けられていない。幾つかの研究では、食事中のリノール酸を増やしても、血中の炎症マーカーの値は上昇しないことが示されていると説明している。
最後に、ケインは、長期間開封していないボトル入りの大豆油、キャノーラ油、ひまわり油について心配する必要はないとし、種子油は風味と鮮度を保つために冷蔵庫で保管するのが最善であると述べている。大さじ数杯を野菜のソテーやサラダドレッシングに使うのは健康的な選択肢であると述べている。また、マフィンやケーキなどの焼き菓子を作る時はバターやマーガリンの全部または一部をキャノーラ油などのマイルドな風味の種子油に変えることを提案している。更に、ファストフードやジャンクフードの食べ過ぎを警告しているが、フライド・ポテトをたまに楽しむのは問題ないと伝えている。重要なのは、種子油だけでなく、その他の脂肪源も適度に摂取することを勧めている。
要するに、近年種子油は、クラッカー、パン、ドレッシング、ソース、冷凍食品、チョコレートなど、あらゆる種類の包装食品、その他多数の健康食品に含まれている。一般的に大幅に料理や焼き物に利用されている種子油は、安値で買えるため、人気があると言われている。しかし、米国の最大機関である保健福祉省の長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアが推進しているMAHA運動はほとんど、否定的側面だけを強調しているようである。一方、著名な栄養と健康学の専門家は、長年の研究に基づき、一部のマイナス要素も認めながら、不飽和脂肪酸を基本とした種子油は、飽和脂肪酸を含バターなどの脂肪より健康的であると確信的に述べている。しかし、揚げ物にはキャノーラ油が適切であるが、レストランでの揚げ物は、何回も加熱される可能性がある為、食べ過ぎに警告している。つまり、種子自体は健康食品であるが、種子油は、精製され、加熱され、化学的過程を通して生産されるため、種子自体とは性質が異なる。しかし、種子油は一般的に、2年間保続できるほど保存期間は長いことを考慮すると、抗酸化性が高いと思われる。