著名な経済専門家は優れた関税廃止論を展開

The Supreme Court won’t hurt America by striking down the tariffs.

The Washington Post 2025年10月28日 

この記事は著名なケイトー研究所の一般経済貿易担当副所長であるスコット・リンシカム氏がトランプ大統領の主な経済政策である関税を米国最高裁が廃止しても米国の経済に悪影響はないと力説しているものである。トランプ政権は、最高裁が関税を廃止した場合、米国は莫大な経済損失に直面すると誇張している。しかし、リンシカム氏は、そのような「トランプ政権の警告にもかかわらず、憲法を遵守することで経済が打撃を受けることはない」と断言した。

著者は「ドナルド・トランプ大統領と彼の同盟者は、「法廷文書と公の場」の両方で、「最高裁が国際緊急経済権限法に基づく世界的な関税発動権を大統領に制限(curtail)した場合、国家に降りかかるとする災難について、空想的な主張(fantastical claims)を展開してきた」と指摘している。最高裁は11月5日に審理する予定であるため、その「訴訟における政府の冒頭陳述書(government’s opening brief)では、不利な判決は米国経済、連邦政府の財政状況、そして、大統領の貿易政策および外交政策の遂行能力(ability to effectuate)に壊滅的な打撃を与えると主張している。その狙いは、たとえ法律が別の解釈を要求しているとしても、慎重かつ制度的な理由(prudential and institutional reasons)から、有利な判決を下すよう最高裁に圧力をかけるため(to pressure the court into issuing a favorable opinion)であるようだ」と述べている。さらに「トランプ政権の訴訟における法的欠陥を考えると、この衝撃と畏怖を煽るアプローチ(this shock-and-awe approach)は理解できる。しかし、このアプローチには重大な欠陥(a serious flaw)がある。それは、根底にある政策主張が滑稽である(The underlying policy claims are ridiculous)ことだ」と指摘している。

まず、政府側弁護士が控訴裁判所への書簡で主張したように、関税反対の判決(a ruling against the tariffs)が「財政破綻につながる(lead to financial ruin)」ことはない。「5月から9月にかけて、関税は連邦政府歳入のわずか4.5%程度に過ぎなかった。しかし、この影響でさえも誇張されている(even this effect is overstated)。なぜなら、関税によって生じる経済成長の鈍化と税基盤の縮小(the slower economic growth and smaller tax base)は考慮されていないからである。」米国最高裁への提出書類の中で、政府は「関税があれば豊かな国になるが、関税がなければ貧しい国になる。いずれにせよ、現実は米国が債務に溺れている(is drowning in debt)。政府の財政軌道(The government’s fiscal trajectory)は、関税の影響を矮小化する他の政策、特に社会保険の受給権(in particular, social insurance entitlements)によって左右される。タックス・ファウンデーションの動態計算によると、2025年から2054年の間に、公的債務(public debt)は国内総生産(GDP)の99.9%から、関税導入で164.1%、導入なしで171.5%に増加する。せいぜい(at best)タイタニック号のデッキチェアが1脚減る程度である」と述べている。

そして、「経済全体への甚大な損害(massive harm to the broader economy)、さらなる大恐慌さえ(even another Great Depression)警告する声も同様にナンセンスです(are similarly nonsensical)。関税政策は限界的な問題であり、(Tariff policy matters on the margins)、特に現在最高裁判所で係争中の中小企業にとっては大きな痛手となり得ます。しかしながら、米国経済全体にとって、貿易政策は変革をもたらすものではありません(trade policy isn’t transformative)。なぜなら、通説に反して、米国は世界で最もグローバル統合が遅れている国々の一つだからです(the least globally integrated countries in the world)。貿易総額はGDPの25%を占め、データのある195カ国中191位にランクされています。一方、最高裁が審議中の関税徴収による歳入(revenue from the tariff collections)は、これまでのところわずか890億ドルに過ぎません。これは、30兆5000億ドル規模の経済においては、端数処理の誤差に過ぎません。関税の財政効果は軽微であるため、関税を無効化して(invalidating them)も、国債および関連証券(government debt and related securities)市場への影響は軽微なものにとどまるでしょう。」

また、「関税が貿易と外交政策の遂行に不可欠であると主張する政権の主張も誤りである。1977年の国際緊急経済権限法(IEPA)成立以来、米国は20カ国と14の包括的自由貿易協定を締結し、世界貿易機関(WTO)においても2つの大規模な多国間協定(massive multilateral agreements)を締結してきた。これにはトランプ大統領自身の米国・メキシコ・カナダ貿易協定と、就任初日に破棄した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が含まれる。米国は同期間に538の条約を正式に批准している。これらの協定のいずれにもIEEPA(国際緊急経済権限法)関税またはその脅威は含まれておらず(None of these deals involved IEEPA tariffs or the threat of them)、トランプ大統領が代表的な外交政策の成果(a signature foreign policy achievement)であり、より広範な中東和平の枠組み(framework for broader Middle East peace)であると考えているアブラハム合意(the Abraham Accords)にも含まれていない。」

そして、「事実上(virtually)、ほぼすべての経済専門家は、一方的な関税(unilateral tariffs)とそれに関連する政策の不確実性(related policy uncertainty)が、トランプ政権の最初の任期中に経済に悪影響を及ぼした(harmed the economy)と結論付けています。つまり、以前の控訴審で警告された『壊滅的な結果(catastrophic consequences)』が、新関税の無効化(invalidating the new tariffs)によって生じることはあり得ない。むしろ、わずかながらも経済に実質的な刺激を与えると期待できる。これは、下級裁判所が関税を違法(the tariffs to be illegal)と判断した際に株価が上昇したことからも裏付けられた結論です。この事件の結末は、裁判所の判決が及ぼし得る影響ではなく、法律と憲法に基づいて判断されるべきです。しかしながら、もし、これらの関税がなければ国家は破滅に直面するとする政府の超法規的な主張(the government’s extralegal claims)を最高裁が検討するなら、その主張が誤りであることを確信できるでしょう。関税は国家のあらゆる問題の解決策ではありません。なぜなら、例えそのような問題が存在するとしても、貿易政策がそれらの主な原因だったことは一度もない(trade policy was never their main cause)からです」と指摘した。

要するに、政治的および経済的両方の側面で、トランプ政権の関税に関する口実は空想的で非現実的であるとして、その点を具体的に説明している。例えば、関税による政府の歳入が誇張されていること、関税が及ぼす「経済成長の鈍化と税基盤の縮小」が無視されていること、最高裁が関税を廃止した場合の災難に関する主張が空想的であること、政策主張が非論理的であるなど、この記事の著者であるスコット・リンシカムは、ほぼ全ての経済専門家がトランプ政権の一方的な関税の不確実性が経済に悪影響を及ぼすと信じていると伝えている。そして、最高裁に提起された政権の弁護士の主張には複数の法的欠陥があると指摘し、米国最高裁が関税政策を廃止しても、米国の経済にダメージを与えることはないと強調している。しかし、政権の弁護士は、政府に有利な意見をもたらすために最高裁に圧力をかけていると警告している。そして、確実なデータに基づいた論理的で説得力のある論議を展開している。多数の訴訟が起きている中で、最高裁は、上訴された関税に関連する裁判の審理を11月初旬に行う予定であるため、その前に、経済専門家は公的に、関税を廃止することを奨励している。ご承知のように、これまでのところ、一般的に経済専門家の圧倒的に共通した意見は、関税が消費者の支払価格を上げるため、インフレーションにより米国を景気後退に導くと言う点である。トランプ政権が法廷で展開する主張には「政策的誤りが蔓延」しており、その他の「政策的誤りの核心」は、法律で制定される関税の決定権が議会にあることを憲法が定めているにも関わらず、必要以上に大統領の権限を強調し、議会で制定すべき法律が大統領令によって課される関税に置き換えられる可能性があることを認めようとしないと指摘している。最近、元連邦準備制度理事会のメンバーや元財務省長官ジャネット・イエレン氏を含む数十人の著名な経済専門家が、トランプ政権による関税措置の無効化を求めるアミカスと呼ばれる法廷助言の意見書を米国最高裁に提供している。これは、11月5日に予定されているIEEPAに基づく大統領の関税権限に関する口頭弁論に関連している。最高裁での審理を意識した経済専門家の動きは如何にこの問題が深刻であるかを示唆している。

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