
カナダのオンタリオ州 Photo credit : iStock
上院議会の共和党は初めてトランプ政権の関税に反対するための行動を取り始めた。28日にはブラジルに対する関税に反対するための法案について審議を行なった。今日29日に複数の共和党議員らが超党派の法案に投票し可決した。上院議会は29日も、カナダに課す関税の法案に夕方投票し、二つの法案は可決した。カナダの関税に関する議会の行動の背景には米国カナダ間の複雑な状況がある。上院議会の共和党議員らの一部は、遂に彼らが取り組むべき任務に目覚めた印象がある。
昨夜、上院議会はブラジルへの関税を終えるための法案への投票を承認した。そして29日、上院では投票を行い、その法案は52対48の超党派の賛成多数で可決した。民主党の上院議席は47であることから5人の共和党議員がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づくトランプ大統領の関税政策を終えることを意味する。そして、これは完全な超党派の行動である。この行動が起きるまで多少長い時間が経過したが、議員らのフラストレーションはピークに達した可能性があることを示唆している。上院で、ブラジルへの関税を終える法案が可決した後、この超党派のグループは水曜日の29日、トランプ大統領のカナダに対する関税の撤廃を求める決議案の審議を開始した。関税撤廃の動きの共和党議員の中心的役目を担っているのは共同提案者のランド・ポール(ケンタッキー州)である。ブラジル関税撤廃法案に賛成票を投じた他の共和党議員は、長年上院議会のリーダーであったミッチ・マコーネル、穏健派の上院共和党議員リサ・マーカウスキー(アラスカ)、スーザン・コリンズ(メイン)、トム・ティリス(ノース・キャロライナ)である。夕方上院議会はカナダへの関税を終える投票を行い50対46票で可決した。二回目の投票ではトム・ティリスが参加していないようである。
カナダへの関税に関する投票は、カナダのオンタリオ州政府が、関税は長期的には米国全ての消費者に損害を与えると発言した元大統領ロナルド・レーガンのスピーチをテレビCMに流したとして、カナダからの輸入品に10%の追加関税を課すとトランプ大統領が先週発表したことに対する反応であると言われている。このレーガンのスピーチは、トランプ氏が以前レーガンは関税を支持した大統領であると述べたことから、論争的に発展した。最近、エアーフォースワンでの機内で、大統領は、カナダがフェイク・ニュースを流したとし、レーガンは必要な時には関税を支持したと記者団に語った。
ファクト・チェック組織が10月28に公開したレーガンによる1987年4月25日のビデオでのスピーチは、画面の下部に英文が表示されている。レーガンは明らかに自由貿易主義者であったことを明白に示している。ビデオのスピーチの一部で、レーガンは「長期的には、こうした貿易障壁はすべてのアメリカの労働者と消費者に悪影響を及ぼします。高関税は必然的に外国からの報復を招き、貿易戦争の引き金になります。そして最悪の事態、つまり市場、企業、そして産業が縮小し、崩壊するのです」と語っている。同ファクト・チェツクは、トランプ大統領がカナダとの交渉を停止した背景について詳細に報告している。オンタリオ州のリーダーであるダグ・フォード氏は10月14日、全米の「共和党支持の選挙区すべて」でこの広告を放映するために7,500万ドルを費やすると発表した。フォード氏は 「これは悪質な広告ではありません。実際には非常に事実に基づいたものです」と述べ、このテレビCMは「私の意見では、この国がこれまでに見た中で最高の大統領」であるレーガン大統領の言葉が使われていると述べた。 フォード氏は、「私たちの意図は常に、アメリカ国民がどのような経済を築きたいのか、そして関税が労働者や企業にどのような影響を与えるのかについて議論を始めることでした。アメリカの最高レベルの聴衆に訴えることができ、目標を達成しました」と述べた。
トランプ氏は10月23日のツゥルース・ソーシャルへの投稿で、この広告は「偽物」であり、「米国最高裁判所の判決を妨害する」意図があったと非難した。トランプ氏はレーガンのスピーチのビデオを「悪質な」広告のために、カナダとの、すべての貿易交渉を打ち切ったと述べた。同氏は10月24日、記者団に「彼らはCMで不正行為をした。ロナルド・レーガンは関税が大好きだったのに、彼らはそうではないと言った。AIか何かのせいだと思うが、彼らはひどく不正行為をした。カナダがCMで不正行為をしたことが発覚したなんて、信じられるか?」と言った。しかし、同ファクト・チェックによると、当時ケイトー研究所に所属していたダニエル・グリズウォルドは2004年に「歴史家や経済学者たちは、レーガン大統領の貿易に関する言説が必ずしも行動と一致していたわけではないと指摘した。 戦後の大統領の多くと同様に、レーガン大統領は自由貿易を擁護しつつも、選択的にそこから逸脱した」という。
最後に、カナダは従来、非常に重要な貿易相手国である。こうした経緯があるため、上院共和党が動き出したことは、何らかの意味がある。恐らく、トランプ氏の関税の一部に異議を唱えた企業や州からの訴訟に関連し、11月5日に審理を行う予定である米国最高裁は、議会の全面的な関税の権利を改めて強調する可能性がある。驚異的な事情は、関税に関して、カナダが直面していた根本的な問題の真実を伝えるために、米国の保守派州に対して、このレーガンのスピーチの広告を流すためにお金を使ったということである。関税に関する政策では歴史家は、レーガンが貿易政策に一貫性はない時もあったと述べているが、レーガンのスピーチはスピーチ・ライターが書いていたため、歴代の他の大統領と同様に、時には第三者が書いた原稿と大統領の方針が完全に一致しない場合もあったかもしれない。それでも、レーガンのスピーチの一部はまさに、当時の大統領には鋭い先見の明があったことを示唆している。スピーチの撮影日も記録があり、時代背景が感じられるほど古く、原稿を読みながら語っており、正真正銘の本物であることを推測または理解することが可能である。1890年代にウィリアム・マッキンリー大統領および1929年にハーバート・フーバー大統領は、いずれも保護貿易政策のために関税を導入したが、1930年代以降、米国政府の全ての大統領は自由貿易を支持していた。公然と自由貿易に反対した大統領は2017年1月に45代目の大統領として就任したドナルド・トランプ氏だけである。