
Photo credit : ABC News
米国での目に余る混沌に対する懸念が最高潮に達した時に声を上げるのは宗教界のリーダー達である。レオ教皇の懸念を反映して、最高層の三人のリーダー達は、米国政権が行なっていることに対して、共同声明を公開した。レオ法王は彼らと同様の懸念を語っているが、米国指導者の名前を出すことを避けている。彼らは、政治的な分裂をさらに深める意図はないが、政権が現在国内外で行っている事、移民が非人間化されていることなど、甚だしい道徳の低下を悲観している。
枢機卿らの声明
マーチン・ルーサ・キング・ジュニアの記念日にあたる2026年1月19日の今日、シカゴ大司教のブレイズ・クピッチ枢機卿、ワシントンD.C大司教のロバート・マッケルロイ枢機卿、バージニア州ニューアーク大司教のジョセフ・トービン枢機卿は、2025年1月20日に新たな政権が支配するようになって以来、初めて合同声明を発表し、今月初めに「多国間主義の衰退を嘆き、初の米国生まれ教皇レオのコメントを改めて強調した」と19日にワシントン・ポストが伝えた。大司教たちは、声明で「2026年、米国は冷戦終結以来、世界の舞台におけるアメリカの行動の倫理的基盤について、最も深刻で痛烈な議論に直面している。ベネズエラ、ウクライナ、グリーンランドで起きた出来事は、武力行使のあり方と平和の意味について根本的な問いを投げかけている」と記述した。声明の中で、3人の米国大司教は、教会の教えに沿った米国の外交政策を求めた。彼らは「牧師として、また市民として、私たちはこの国のために真に倫理的な外交政策を確立するというビジョンを支持します」と記した。しかし同時に、米国は建設的な議論を行う能力を益々失いつつあるように見えると警告した。彼らは「アメリカの政策の倫理的基盤に関する我が国の議論は、二極化、党派心、そして狭隘な経済的・社会的利益によって阻害されている。レオ教皇は、この議論をはるかに高いレベルに引き上げるための視点を与えてくれた」と記述した。また、枢機卿らの声明で、司教たちは「人々の無差別な大量強制送還に反対する。移民であろうと法執行機関の職員であろうと、非人間的な言論や暴力行為が終結することを祈る」と述べている。
トランプ政権に批判的なレオ教皇の声明
レオ教皇は今月初め、教皇庁駐在各国大使に向けて行われた教皇の年次外交政策のスピーチの中で、「対話を促進し、すべての関係者の間で合意形成を目指す外交は、個人あるいは同盟国グループによる武力に基づいた外交に取って代わられつつある。戦争が再び流行し、戦争への熱狂が広まっている。第二次世界大戦後に確立された国家が他国の国境を侵犯するために武力を行使することを禁じる原則は、完全に崩壊してしまった」と述べた。ポスト紙の解説によると、レオ氏は昨年、政治的分断と二極化を悪化させる意図はないことを示し、トランプ氏やアメリカの保守派に言及する際も、前任者のような鋭く対立的な口調は避けたが、レオは就任後数ヶ月の間、トランプ氏を名指しで批判することはほとんど避けていたものの、批判の矛先を徐々に鋭くしていった。9月、レオ教皇は、バージニア州クアンティコ海兵隊基地で急遽招集された米軍首脳会議でのトランプ大統領と国防長官ピート・ヘグセスの強硬な発言に対し、「懸念」を表明した。故フランシスコ教皇もまた、米国における移民への「非人道的な」扱いを非難した。さらに、米国カトリック司教協議会(USCCB)は11月、異例ともいえるほぼ満場一致の声明で、トランプ政権による不法移民への取り締まりを「神から与えられた人間の尊厳」への攻撃として非難し、「わが国の移民法における意義ある改革」を提唱した。
レオ教皇と枢機卿のスピーチは前任者フランシスコとの違いを強調
レオ法王と枢機卿の非難は「アメリカ人にとって、フランシスコ教皇からの批判よりも受け流しにくいものとなる」可能性がある。「フランシスコ教皇は、しばしばグローバル・サウスに根ざした世界観を表明し、アメリカの力に対して根本的に懐疑的な姿勢を示してきたからである。シカゴ出身のレオは、イデオロギー的な偏見が少ないと見られており、彼の言葉はより純粋に道徳的な文脈で解釈される可能性が高い」と述べている。ダブリンのトリニティ・カレッジで教会学の教授を務めるマッシモ・ファッジョーリは、「フランシスコには、反米主義、反ヤンキー感情という遺伝的な要素があった。明らかに、レオ法王やアメリカの枢機卿たちにはそのような要素はない」と指摘した。なぜなら、米国教会の階層構造は、決して一体制ではなく、「リベラル派に偏っているわけでもない」つまり、党派的なメッセージを送る意図はないことを明白にした。マッケルロイ枢機卿はワシントン・ポスト紙に対し、そのような教えの一つとして、「戦争は外交政策の常套手段であってはならない。特定の国の富を増やすために使われるべきではない」と述べた。さらにマッケルロイ氏は、人道支援はすべての国の義務であるとも述べ、これらはカトリックの教えの根幹をなすものであると言う。これは、トランプ政権が昨年早期から人道的支援と国際援助を大幅に削減したことに言及している。クピッチ枢機卿はワシントン・ポスト紙に対し、「我々は、軍事行動から海外援助の削減、現在議論されている幾つかの問題に至るまで、状況に危機感を表明する多くの枢機卿たちの声を聞いた」と語った。一方、マッケルロイ枢機卿は、もっと率直に「多くの枢機卿は、米国が国際問題において取っている立場について、私たちに懸念を表明しました」と述べた。
外部の識者はどう見ているか?
バチカンに関する著書を多数執筆しているローマ在住の作家マルコ・ポリティは、「今日、ローマ教皇庁はトランプ氏の外交政策構想とは明確に対照的な立場にある。教皇庁は多国間主義を体現しており、世界をまるで私有地のように勢力圏に分割しようとする強大な権力者たちの構想とは正反対の立場をとっている」と述べた。トランプ政権初期に廃止された米国務省宗教・国際問題局の局長を務めていたショーン・ケイシーは世界中の人々がレオ教皇とカトリック指導者たちに指針を求めていると述べた。「何千人ものカトリック指導者たちが先週のレオ教皇の演説を読み、カトリックのネットワークを通じて意見交換をしています。カトリック教会は世界中にネットワークを持っていますから。彼は長期的な視点で物事を考えているのだと思います。教皇としてはまだ比較的若い年齢ですから。」米国大統領の任期に言及したケイシーは「任期があと3年しかないことを彼は理解しています。いきなり強硬な姿勢に出ることはないでしょう」と語った。
宗教界のリーダー達が政権の政策に異議を唱えることは特に珍しいことではないが、今日19日、三人の枢機卿は、トランプ就任後から表明し始めたレオ教皇の懸念を反映し、トランプ政権が実施している人道支援や国際援助に対する資金の削減が冷淡であり、移民の大量強制送還は非人道的であり、外国での爆破は非民主的で非倫理的であること、世界を自身の所有地のように支配しようとしていることなどは極端な政策であると批判した。グリーンランドを購入するという米国大統領の政策に反対する国には関税を課すと脅した。グリーンランドの住民らは週末に「グリーランドは売り物ではない」との看板を掲げて雪が積もっている外でプロテストを行なったようである。また、先週トランプ氏は、市民の希望に反して、ミネソタ州ミネアポリスに対して、反乱法を行使すると脅したが、その実行には至っていないものの1,500人の軍隊を派遣するなどの考えを浮上させた為、その可能性に備えて軍隊は待機していると19日報告されている。トランプ氏の国内外の多くの政策は、狭い範囲に影響を与えるものではなく、連鎖反応式に様々な側面でグローバル的に影響を与えるため、世界の人々が注目している。世界を駆け巡り、各地でスピーチを行うレオ教皇と彼の同盟者である宗教リーダー達が公的に米国の現政権の政策を批判しても不思議ではない。彼らは、前任者のフランシスコほどリベラルではないため、彼らの公的スピーチは、もっと説得力がある可能性があると示唆されているが、カトリックの最高権威者らの公的批判のために、政策を変えるほど正常であると誰が言えるだろうか?多くの世論調査は、強硬な政策を支持する率は総体的に約30%から35%であり、そのような極右の有権者は、教会のリーダーが反対している移民法や外交政策を支持している現実に注目する必要がある。