
WNO Photo credit : Playbill
昨年12月、ケネディ・センターの理事会がドナルド・トランプ大統領の名前を追加することを投票で決定して以来、ここでの文化活動はほぼ停止された。ほぼすべてのコンサートやその他の芸術的なイベントは中止になった為である。そのため、トランプ大統領は2月1日、7月4日の独立記念日からケネディ・センターが改修工事に入るため、2年間閉鎖されると発表した。ケネディ・センターの歴史は、イベントが次々にキャンセルされるその理由が何であるかを示唆している。
ご承知のとおり、ケネディ・センターの理事会は2025年12月18日に、ドナルド・トランプ大統領の名前を同施設の名称に加えることを決定した。このニュースを受けて、多くのミュージッシャンや芸術団体が、この芸術施設での今後のイベントを次から次に中止している。最も重要なエピソードは、1月9日にワシントン・ナショナル・オペラがセンターのビジネス慣行を含む様々な変更を理由に、長年の拠点から撤退すると発表したことである。ワシントン・ナショナル・オペラ(WNO)の理事会は、ケネディ・センターとの提携契約を「友好的に早期終了」することを決定した。この契約解消を求める決議案には、WNOがケネディ・センター・オペラハウスでの公演をできるだけ早くすべて移転することが明記されている。建物の名称が変更されて以来、イベントへの参加をキャンセルした著名な芸術家の中には、毎年恒例のクリスマスイブのコンサートを中止したジャズ・ドラマーのチャック・レッド、ケネディ・センターでの大晦日のコンサート公演を中止したジャズ・スーパー・グループのザ・クッカーズ、作曲家のフィリップ・グラス、ソプラノ歌手のルネ・フレミング、著名なバンジョー奏者のベラ・フレック、そしてミュージカル「ウィキッド」の作曲家スティーブン・シュワルツなどが知られている。
2月1日の日曜日、ドナルド・トランプ大統領はケネディ・センターを改修工事のため約2年間閉鎖する計画であると発表した。同日、ワシントン・ポストが伝えたところによると、トランプ氏は約1年前にこの芸術施設兼大統領記念館の運営を引き継ぎ、彼の名前とイメージに合わせて刷新して以来、相次ぐ公演中止や内部混乱が続く中で提案されたものである。ソーシャル・メディアでの投稿で、「トランプ・ケネディ・センターは、建設、再開発、そして完全な再建のために一時的に閉鎖されれば、間違いなく世界最高の舞台芸術施設となるだろうと私は確信している。つまり、閉鎖しなければ、建設の質は以前ほど高くなく、施設を利用する多くのイベントによる観客の来場中止のため、完成までの時間も大幅に長くなるだろう」と述べた。このトランプ氏の提案は、投票による理事会の承認を得る必要があるものの、長年歴史的なケネディ・センターの従来のメンバーは、トランプ大統領の提案に反対する人はほとんどいない彼の忠誠者と入れ替わられた為、非常に党派的になった。
トランプ氏の提案によると、条件として、ケネディ・センターはアメリカ建国250周年にあたる7月4日に閉鎖され、直ちに建設工事が開始される予定であるようだ。同氏は「資金調達が完了し、万全の体制が整った!多くの尊敬すべき専門家からの意見に基づいたこの重要な決定により、老朽化し、荒廃したセンターは、これまで以上に素晴らしい、世界一流の芸術、音楽、エンターテイメントの殿堂へと生まれ変わるだろう」と述べた。ケネディ・センターの所長リチャード・グレネルは、ワシントン・ポストが入手した日曜夜の職員宛てのメールで、これらの計画を認めた。「人員配置や運営上の変更の要点については、今後数日中に詳細をお知らせします」と述べている。 グレネルはXへの投稿で、昨年成立した包括的な約2兆ドルの予算法案によって、「施設の改修、修復、メンテナンスの遅延解消、およびセキュリティ設備の整備」のために2億5,700万ドルが割り当てられたことに言及した。
ケネディ・センターは歴史的意義が変わる可能性がある。米国第34代大統領ドワイト・D・アイゼンハワー大統領(1953年1月―1961年 1月)は1955年、世界文化の舞台を米国にするために、首都ワシントンD.Cに新たな公共文化施設を建設するための委員会を設立した。1958年にアイゼンハワー大統領は国立文化センター法に署名し、芸術がすべてのアメリカ人に不可欠な価値があることを確認した。その後、ジョン・F・ケネディ・センター・フォー・ザ・パフォーミング・アーツが設立され、この施設は真の「芸術の聖地」として、世界で最も尊敬される組織の一つとなった。国立文化センター法には、4つの基本的な構成要素が含まれており、センターが独立した施設であり、自立運営され、民間資金によって運営されることなどを規定していた。古典作品から現代作品まで幅広いジャンルの公演を行うという芸術的使命が明記されていた。これらは、引き続きセンターの活動を支える指針として永久的な原則となっている。ジョン・F・ケネディは生涯にわたり芸術を支援し擁護してきた大統領であり、このような活動を「人類精神への貢献」と頻繁に呼んでいた。ケネディは、新しい国立文化センターのための資金調達において主導的な役割を果たし、1962年11月に3,000万ドルの資金調達キャンペーンを開始した。ケネディ大統領暗殺から2か月後の1963年11月、議会は法案を可決し、ジョンソン大統領の署名により法律が成立した。この法律により、エドワード・デュレル・ストーンが設計した国立文化センターは、ケネディ大統領への「生きた記念碑」として改称された。この法律は、後にジョン・F・ケネディ舞台芸術センターとして知られることになる施設の建設を支援するために、議会は2,300万ドルの予算を承認した。
最後に、同センターの理事長を務めているトランプ大統領の2年間の閉鎖計画の発表は、キャンセルが相次いでいるためである。また、この発表は、ファーストレディのドキュメンタリー「メラニア」が同センターで初上映された数日後に来ている。トランプ氏は、ケネディ・センターが老朽化しており、長年にわたり財政的にも構造的にも劣悪な状態にあるため、「改修後は芸術、音楽、エンターテイメントの世界的な拠点として変貌させるだろう」と述べている。数億ドルの資金によって建物の表面が美しく変わっても、ケネディ・センターの超党派的な伝統は失われるため、長年ケネディ・センターを支えてきた人々にとっては精神的に失うものが大きいと思われる。また、センターは「生きた記念碑」として、ジョンF・ケネディ大統領を尊敬し、愛する人々によって運営が維持されていた。前例のない混沌の中で注目されているケネディ・センターの歴史的意義は、トランプ氏とは何の関連性もない。このセンターは、ほぼ完全に党派的な人々で運営され、本質的に変わるため「世界的な拠点」の理想を維持できるかは不明である。共通点はほとんどないものの、ジョンF・ケネディの名前の前に追加された人物によって支配されることになる。トランプ氏の名前の追加に反対した個人やグループも多いとされている。2025年3月、最初に公演を中止したのはミュージカル「ハミルトン」の巡回公演であった。プロデューサーのジェフリー・セラーはXへの声明で、トランプ政権が多くの民主党系理事を解任したことに反対すると表明した。昨年、バンジョー奏者のベラ・フレックは、芸術の中心地が「政治的になった」という理由に基づき演奏をキャンセルしたのである。議会はいまだに、トランプ氏の名前の追加を承認していない。これを承認したのは、トランプ氏が指名した理事会のみである。これらは正常な状況ではない。