
U.A.E Photo credit : World Atlas
アラブ首長国連邦はOPECから脱退すると表明している。この決定に至った理由は、対イラン戦争による結果としてのホルムズ海峡封鎖や石油コストの高騰に加えて、他に何があるだろうか?アラブ首長国連邦の脱退により、OPEC加盟国の中で原油価格の安定性管理に最も責任が重くなるのはどの国だろうか?イランは、米国が現在続けている封鎖を停止すれば、ホルムズ海峡を再開し、戦争を終えると申し出ているが、米国はそれに満足していないと見られている。
OPECの歴史:OPECは1960年9月14日、バグダッドにおいて、イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラの5カ国によって設立された。5月1日からOPECと決別するアラブ首長国連邦(U.A.E)を含むOPEC加盟国は、アルジェリア、赤道ギニア、ガボン、イラン、イラク、クウェート、リビア、ナイジェリア、コンゴ共和国、サウジアラビア、およびベネズエラである。これら12カ国で構成されるOPECは2022年の時点で、世界の石油生産量の約38%を占めていた。世界の石油埋蔵量の推定約79%はOPEC加盟国に存在するとされている。
28日にニューヨーク・タイムスが伝えたところによると、2026年4月28日、アラブ首長国連邦(U.A.E)は、クォータ(生産枠)をめぐる摩擦やエネルギー情勢の変化を受け、生産能力の拡大を含む国益の追求を目的として、2026年5月1日付でOPECから脱退すると発表した。U.A.Eは、世界市場に影響を与えるための重要な「余剰生産能力」を実質的に有する数少ないOPEC加盟国の一つである。U.A.Eは長年、生産割当制によって自国の石油輸出能力が不当に制限されていると不満を訴えており、1967年に加盟したOPECとの決別は当局者らが長年にわたり、同組織からの脱退案を提示し続けてきたことの結果でもあることを示唆した。同国は「自国の国益のために、2027年までに生産能力を日量500万バレルへと引き上げる」ことを目指しており、イランとアラビア半島を隔てる狭いホルムズ海峡が再開された場合、増産に踏み切ると推測されている。国際エネルギー機関(IEA)は、U.A.Eがパイプラインを通して海峡を迂回させ、一部の石油を輸送する能力があるが、それでも3月には石油生産量3分の1以上の削減を余儀なくされたと述べている。
脱退の理由:タイムス紙によると、5月1日からの脱退により「OPECの影響力は弱まるとみられている。」U.A.E脱退の主な理由は、これまで12カ国の連合体であるOPECの影響力が低下しているためである。従来、OPECは、加盟国やその同盟国に対してクォータ制を設定することで、原油価格を主導してきたが、近年、主に米国をはじめとする非加盟国での生産量が急増したことに伴い、OPECの支配力が弱体化した為である。イランでの戦争以前、アラブ首長国連邦はサウジアラビア、イラク、イランの次にOPEC最大級の産油国であり、1日あたり約360万バレル(世界の供給量の約3%に相当する原油)を産出していた。U.A.Eのエネルギー相スハイル・アル・マズルーイは、タイムス紙とのインタビューを通して、同国当局がOPECからの脱退を決定したのは「消費者の需要に応えるための自由度を高めるためです。世界はより多くのエネルギーを必要としており、より多くの資源を求めています。そしてU.A.Eは、いかなるグループからも制約を受けない存在でありたいと望んでいるのです。我々は今後も、責任ある生産国であり続けます」と述べた。同氏は、U.A.Eが石油市場への混乱を最小限に抑えことを可能にするタイミングでの脱退を望んでいたと語った。加えて、2月28日から始まった米国・イスラエルによる対イラン戦争で、イスラエルと同盟国であるU.A.Eは自国のインフラ施設がイランにほぼ前例のない大規模なミサイルやドローン攻撃を受けたという緊迫した経緯により、独自の判断で行動することを強く望んだためである。
U.A.E脱退後に責任を負う国:U.A.E脱退後、サウジアラビアは原油価格の管理責任を担うことになる。サウジアラビアが責任を負う理由は幾つか挙げられる。OPEC加盟国の中で、最大産油国であるサウジアラビアは、U.A.Eの脱退により、「OPECによる世界的な供給統制力が低下し、価格暴落を阻止する責任」が伴う。これには、価格の下支えを行うため、残存する加盟国間の規律を維持しながら、自国の減産幅を拡大する必要がある。しかし、「OPECからの脱退は、現時点では原油価格にとってほとんど意味がない。なぜなら、米国/イスラエルとイランとの対立により、ペルシャ湾岸地域の産油国が軒並み減産を余儀なくされている」ためである。しかし、「長期的には、生産管理の対象となる原油量が減少することから、この動きは市場の変動率を一層高める要因となり得る」という。対イラン戦争前、OPEC加盟国は世界の原油供給量の4分の1以上を担っていた。ロシアを含む他数カ国も、「OPECプラス」と呼ばれる枠組みを通してOPECと協調体制に置かれている。
最後に、U.A.Eの脱退は、OPECの権威が低下したためである。また、同国は生産拡大を計画しており、これが原油価格の下落を招く恐れがあるため、他のOPEC加盟国には多大な痛手となる可能性がある。そこで、OPECのリーダー格であるサウジアラビアは価格が暴落することを阻止する役目を果たすことになる。なぜなら、イラン戦争によって、原油の需要と価格高騰がピークに達している中で、U.A.Eは、制限されることなく、同国の自由な判断により、埋蔵資源を即時に収益化することを目指している一方で、サウジアラビアは長期的な価格水準を安定及び維持することを目指している。つまり、長期的に脱退を考慮していた同国は、イラン戦争が決定的なきっかけになったことを示唆している。ご承知の通り、2月28日にイランとの戦争が始まって以来、この海峡は事実上3ヶ月間閉鎖状態が続いている。しかし、イランは、米国が封鎖を停止すれば、ホルムズ海峡を再開し、戦争を終えることを提案したことが27日に報告されたが、米国はイランの提案に満足していないという。トランプ政権は、イランによる核兵器開発を決定的に阻止することを目指しており、加えて、濃縮ウランの引き渡しを停戦の条件としていることから、イランの最新の提案を真剣に考慮する可能性があるかは不明である。イランが米国のこれらの要望に応じるなら、戦争はとっくに終焉していたはずである。