巨大なボールルーム(舞踏広間)の建設費用は、民間からの寄付から賄われるとされていたが、建設会社からの請求書やプロジェクトの予算概要記録を入手した主要メディアの報告は、総工費の約半分は税金からきていることを示している。これは単なる舞踏広間だけではなく、屋根上の安全保障システム、セキュリティを強化した地下シェルター及び医療設備が含まれているため、複雑なものとなっている。
ワシントン・ポスト紙の長い独占記事によると、昨年7月にイースト・ウィング(東棟)のプロジェクトを最初に発表して以来、ドナルド・トランプ大統領は、費用が4億ドルを超えないこと、そして非営利団体を経由した民間寄付で全額を賄うことを繰り返し述べてきた。ホワイトハウスの東棟が取り壊されてから5ヶ月後、トランプ氏は、この跡地に建設される巨大な舞踏広間と地下シェルターの総工費は最大4億ドルになるが、全額を民間寄付者が負担すると主張した。また、シークレット・サービスや軍がセキュリティ強化の面で貢献すると語っているが、それらの改修にかかる費用については詳細を明らかにしていない。トランプ氏は3月31日、大統領執務室での記者会見で、爆撃システム、地下シェルター、主要な医療施設を含むこのプロジェクトには「税金を使わない。納税者の負担は1セントたりともない」と語った。
しかし、請負業者による請求書のコピーを受理したポスト紙によると、トランプ氏の発言の3週間以上前に、工事を請け負うバージニア州マクリーンに拠点を置くクラーク建設会社がホワイトハウスに提出した詳細なプロジェクト概要では、総工費は6億ドルと試算されており、その半分以上が税金で賄われることになっていた。 トランプ氏がこの件で3月に発言をした時点で、連邦政府はすでに同業者に対し、総額数千万ドルの公金による支払いを十数回にわたって承認していた。 同社からホワイトハウスに提出された複数のプロジェクト概要からは、内部的な費用試算は、政権高官が公の場や裁判所への提出書類で認めてきた金額よりも大幅に高いことが判明している。また、これらの資料は、計画発表の当初から、工事が税金に大きく依存する見込みであったことも示している。 ポスト紙は、2025年7月から今年3月までの日付が入ったプロジェクト全体の費用見積書を6通入手した。それらの資料には、費用の増大及び想定される資金源が示されている。それらの記録や請求書の履歴、関連するやり取りは、トランプ氏の野心的な建設プロジェクトについて、これまでで最も詳細な実態を明らかにしている。このプロジェクトは大多数の米国国民が強く反対しており、一部の共和党議員でさえ、その資金拠出に難色を示している。
2025年7月31日、ホワイトハウスが最初にこの舞踏広間の建設計画を発表した際、その報告では総工費2億ドルとされるプロジェクト費用は、トランプ氏や「その他の愛国的な寄付者」による拠出で賄われると説明されていた。また、ホワイトハウスは「米国シークレット・サービスが、必要な警備の強化や改修を行う」と述べていたが、地下の軍事用バンカーについては一切言及されていなかったという。また、政権側と同社の代表者クラーク氏は昨年6月から連携し、建設の規模や費用の策定に取り組んでいた。ポスト紙が入手した記録では、ホワイトハウス当局者は7月11日付の暫定的な見積もりを受け取っており、そこでは建設費が2億7,000万ドルに上ると予測されていた。そのうち1億ドル以上は、シークレット・サービスやホワイトハウス軍事局を通して、税金から拠出されることになっていた。
当時の電子メールからは、政権当局者が、解体前の敷地整備にかかる初期費用を賄うために、シークレット・サービスの予算から360万ドルを充てる計画を立てていたことを示した。ホワイトハウスの法務担当者は7月30日、同僚宛てのメールの中で、契約条項に一文を追加したと説明した。その理由は、「米シークレット・サービスが資金を提供している以上、プロジェクトを警備関連の課題とより密接に結びつけるため」であった。 ホワイトハウス管理室の法務顧問であるキャロライン・ハンター氏は、「この修正は、財政法の原則を遵守する上で重要だと考えている」と記述した。費用見積もりによると、解体作業そのものの一部費用を賄うためにも、160万ドル以上のシークレット・サービスの資金が予算に計上されていた。
ポスト紙の依頼により、これらの文書を精査した契約・調達の専門家3人は、東棟の解体は、政府要人の警護というシークレット・サービスの任務の範囲外であるように見受けられると指摘した。過去4つの政権にわたるキャリアの中で、複雑な政府不動産プロジェクトを監督してきた元連邦一般調達局(GSA)職員アンソニー・コスタ氏は「それは無理のある理屈です。なぜそれが、シークレット・サービスが実施し、資金を負担すべきことになのですか?」と語った。クラーク氏が東棟の解体に着手したのと同じ週の10月22日、トランプ氏は記者団に対し、費用が3億ドルに上昇したと言い、軍も関与しているものの、プロジェクトの費用は「私自身と数人の友人が100%負担する」と述べた。
しかし、解体が始まった10月20日付のプロジェクト概要には、クラーク氏がプロジェクト全体の費用を4億7,800万ドルと見積もっていたことが示されている。文書によれば、その費用のほぼ半分を税金で賄う予定となっていた。 12月にホワイトハウスで発言した際、トランプ氏は費用が4億ドルに達する可能性があると述べ、「我々は、およそ4億ドル相当の建物を寄付するのです」と言った。 しかし、今年3月までに、クラーク氏はホワイトハウスに対し、推定費用が6億ドルに増加したことを報告していた。3月5日付のプロジェクト概要によると、その費用のほぼ半数にあたる2億9,300万ドルは「民間資金」で賄われる見込みとなっていた。また、残りの内訳は、シークレット・サービスから1億5,500万ドル、ホワイトハウス軍事局から1億4,900万ドル、大統領公邸から300万ドルとなっており、これらはいずれも税金を財源とする機関からの拠出であった。
同月、トランプ氏が「病院」と表現したものを含む地下のセキュリティ施設が、このプロジェクトに含まれていることを政権は認めた。 歴史的建造物の保存団体は、ホワイトハウスが必要な審査手続きを怠ったとして訴訟を起こしたため、裁判所は3月に差し止め命令を下した。これにより地上部分の建設は一時停止されたものの、安全な地下シェルターの工事継続は認められた。4月には、ホワイトハウス記者協会の晩餐会会場に暗殺を企てたとされる人物が侵入した事件を受けて、トランプ氏や一部の共和党議員は、東棟の建て替えは国家安全保障上の急務であると主張した為、大統領用舞踏広間の改修およびホワイトハウスのセキュリティ・インフラ強化」のために4億ドルの支出を認める法案が提出されたが、7人の共和党上院議員は民主党に加わり、この法案を阻止した。 その7人の一人であるスーザン・コリンズ氏は「トランプ大統領は、舞踏広間は民間からの寄付で建設されると述べていました。その約束こそ守られるべきだと思います」と述べた。
法案が審議中だった5月、トランプ氏は記者団に対し、建設現場の進歩状況を公開し、「これは一つの統合された建物なのです。ある部分だけでは機能せず、すべてが連動しています」と述べた。この時、大統領は建物の各部分の費用を誰が負担するかについて、より明確に区別して説明した。東棟地での新たな建設の一部については政府が費用を負担すると述べ、その工事は「当該施設およびホワイトハウス敷地全体の安全確保のため」のものだと説明した。トランプ氏は 「シークレット・サービスや軍には、ここでご覧いただいているような工事の一部を行うための予算があります」と語った。一方で舞踏広間そのものについては、「税金で賄われることはありません。これはアメリカ合衆国への贈り物なのです」と述べた。
シークレット・サービスとホワイトハウス軍事局は、長年にわたり、大統領とその家族、そしてスタッフのためにホワイトハウスの敷地内の安全を確保する役割を担ってきた。トランプ氏は、警備関連の支出の一部は、建物の屋上に「ワシントンを守る為の史上最大のドローン防衛網」を構築することなど、防衛体制の強化に充てられると述べていた。しかし専門家らは、東棟の建設費は寄付金で賄われるとしていた政権側の説明と、プロジェクトの文書内容には矛盾があると指摘した。元国防省調達担当官で、現在は全米行政アカデミーの理事長を務めるスタン・ソロウェイ氏は、契約および予算の観点から、「余興用スペースを、この計画に含まれる他のあらゆる部分から切り離して考えることは不可能です」と述べた。 同氏は、文書を見れば、舞踏広間の一部についても納税者が費用を負担していることは明らかであると指摘し、「費用が(他の部分に)波及してしまうのは避けられないことだと思います。一つの建物なのですから」と語った。
要するに、ワシントン・ポストの記事は、ホワイトハウスの建設プロジェクトの内容をさらに詳細にしているものの、幾つかの重要な点が不明であることを浮き彫りにしている。(1)東棟を取り壊した跡地は最初に公表された巨大で豪華な舞踏広間だけのプロジェクではなく、建物の屋上には「史上最大のドローン防衛網が構築」され、その地下には、安全機能性が整った軍事シェルターが建設され、さらに医療設備も設置されるため、最初の2億ドルから、最終的にはその3 倍の6億ドルに増加した。(2)トランプ氏は繰り返し、このプロジェクは納税者の負担がゼロである述べていたが、一部政府のセキュリティに関連するプロジェクの予算は、シークレット・サービス部門と軍事局から来ると述べている為、これは議会が配分する予算を意味している。結局、最初の予定から3倍増加し、大部分は納税者が負担する可能性が高いことを浮き彫りにしている。加えて、次の二つの疑問は当ブログの調査に基づいている。(3)舞踏広間の建設資金は誰が寄付したのか?ワシントンD.Cの責任と倫理を求める市民の会(CREW)の報告によると、多数の富豪者が寄付したとされるその情報には完全な透明性がない。全ての寄付者の氏名と金額が報告されていないため、2007年に改正されたHLOGA(誠実なリーダーシップと開かれた政府に関する法律)第203条に違反している可能性がある。この法律は、対象となる個人や組織に対し、議会への報告書提出を義務付けており、半年間に行った寄付や支出に関する日付、受領者、金額などを開示することが求められている。加えて、(4)その寄付金は誰が管理しているのか? そのプロジェクトのための寄付金はナショナル・モール・トラストを通して行われたが、トランプ氏によって「指定された団体に対する寄付であったと結論付ける十分な根拠がある」という。その場合、自らの寄付内容を公表すべきである。いずれにしても、トランプ氏が公的に語っていた事とは大幅に事情が異なっているようである。同氏は個人の長年の不動産業の慣行をホワイトハウスに持ち込み、家族経営のビジネスと連邦政府の大統領職を混同しているように見える。