
Photo credit : Facebook
ナショナル・モール内にあるリンカーン・メモリアル(記念堂)とワシントン記念塔の間に位置するプールは毎年、訪れる有名な庭園、公園、記念施設などに見られる水景施設で有名な観光の一つである。リフレクティング・プール(反射池)とも呼ばれているこの観光地には、年間で数千万人が訪問すると言われている。その呼び名は噴水などの水流による波立ちがなく、水面が鏡のように周囲の景色を映し出すようになっている為である。この長方形のプールのサイズは巨大であり、2,030フィート× 167フィート(619メートル× 51メートル)である。多くのイベントもこの周辺で行われ、大統領就任式には、このプールに沿って大勢の人々が参加することでも知られている。
トランプ大統領は、リフレクティング・プールを美しく改修することを提案しており、建国250周年を記念して、リンカーン記念堂の近くに巨大な「凱旋門」を建設することを提案した。そのプルーの水がブルーに反映するためのプールの改修などを望んでいた。そのプールの改修作業は実際に行われた。プールの改善工事を行った大統領は、トランプ氏が最初ではなく、バラク・オバマ大統領は就任初年の2009年に再投資法による資金を活用し、リンカーン記念堂のリフレクティング・プールの改修作業を行った。この作業は1年半年かかり、国立公園局は約3,000万ドルを支出した。トランプ政権は2026年4月、プールのコンクリート底面の表面を、アメリカ国旗の青にちなんで、ブルーに塗るため、「アメリカン・フラッグ・ブルー」と命名した。この塗装に加えて、藻を除去することを目的として、改修作業が開始されたと発表した。しかし、連邦機関による通常の審査や意見公募、さらに議会の承認を得るための手続きは全て省略された。5月8日、内務省はこのプロジェクトに1,310万ドルを支払う計画であることを発表した。6月最初の週末までには作業は完了し、リフレクティング・プールへの注水が開始された。このプロジェクトが完了した数日後、プール内に再び藻が発生した。国立公園局の作業員は、藻を除去するために手作業での吸引に加え、過酸化水素を使用していた。しかし、青色の表面被覆材も、完了後から剥がれ始めた。プールの表面にはあちこちに剥がれた素材が浮き上がっている様子や、多量の藻も浮いていた状況が注目されている。

Photo credit : Local 10 News

Photo credit : Newsweek
日曜日の6月21日には、パーク・サービスの職員らが、プルーの清掃作業を行なっていた。トランプ氏は、剥がれは「破壊行為」によるものだと主張しているが複数のメディアは、その主張を裏付ける証拠は存在しないと指摘している。しかし、この驚くべきニュースは、大統領が意図的なダメージであると主張しており、複数の人々が逮捕されたことである。ワシントン・ポストが21日に報告した記事によると、先週、作業員が藻の除去作業を行っていた際、改修されたばかりの内張りから塗料が剥がれ落ち、その一部が水面に浮いているのが確認された。連休中に複数の法執行機関が当該プールの周辺を巡回した後、トランプ大統領は21日、リンカーン記念堂のリフレクティング・プールの新たな修復作業を「直ちに」開始すると発表し、「象徴的なプール」への「破壊行為」を行った者たちを引き続き非難した。政府当局者の話を引用したポスト紙によると、20日夜の時点で、5人が器物損壊の容疑で逮捕・訴追された。同当局者はその時点で、他5人に対して連邦法違反の告知書が交付されたと述べた。ポスト紙は、21日にその告知書が交付されたことを確認した。
ポスト紙の記者は6月20日、現場で米連邦保安官が女性を拘束する場面を目撃した。この女性は、池から塗膜の破片を拾い上げたことで、器物損壊の疑いをかけられた。女性は警官に対し、水面に浮いていたその塗膜をゴミだと思ったと説明していた。訴追されたある人物はポスト紙に対し、剥がれかかっていた塗料に触れたものの、損傷は与えていないと語った。また別の人物は、水面に浮いていた塗料の破片を拾い上げたと警察官に話しているのを聞いたという。21日、この観光名所には公園警察、連邦保安官、そして各地から集まった保安官代理らを含む警察官たちが、徒歩や騎馬で絶えず警戒にあたっていた。その間、サイクリスト、ランナー、濃い青色の塗料の塊を覗き見るためにやって来た観光客らで賑わっていた。21日の午後1時半ごろ、ポスト紙の記者は、水の中から何かを引き揚げた疑いで、公園警察の騎馬警官が若い男性に違反切符を手渡す場面を目撃した。家族連れで公園を訪れていたその男性に対し、警官は「協力的だから、今日逮捕はしない」と告げた。
ポスト紙によると、トランプ氏は、長年続いていた水漏れ問題の解決策として、6週間を要するプールの改修計画を大々的に打ち出していた。この取り組みは、建国250周年を祝う行事が計画される中、ワシントンの景観を美しく整えようとする同政権の施策の一環である。しかし、改修後わずか数日で、リフレクティング・プールは過去数年間で最大級の藻の大量発生が確認されるなどの問題が露呈した。内務省は先週、藻の栄養源を効果的に断つため、過酸化水素と「ハイテク・ナノバブル・オゾン技術」を利用して、プールの水質改善を行っていると発表した。トランプ氏はその後、この改修工事により、「水がきれいになり、100年は持つ」と語っていたため、塗装の剥がれが発生したことで全米の注目を集めることになった。
改修工事を終えてプールへの注水が再開されてから16日後の6月20日夜、大統領は再び水を抜く可能性があると示唆した。その原因として「言語道断な破壊行為」を挙げ、「何者かが腐食性の化学物質をプールに投入し、ナイフや刃物のようなもので美しい外壁に長さ250フィート(約76メートル)の切り傷をつけたとの被害を指摘した。当局者は、これまでに14件の被害届が警察に提出されている」という。21日、警察や記者らは、そのような傷を発見できず、トランプ氏の発言を裏付ける確定的な証拠は発見されなかった。器物損壊の容疑で逮捕されサイクリストで元米国五輪代表のデビッド・ハーン氏は、19日に自転車で走行中にそのプールに立ち寄り、プールの底から一部が剥がれかかっていた新しい内張りの破片に触れようと手を伸ばしたと語った。ハーン氏は、ワシントン・ポスト紙の取材に対し、「私は何も破壊行為を行っていません。何かを壊したり、割ったり、剥がしたりしたわけではありません。事態を理解したときには、すでに手錠をかけられていました」と語った。ここ数日、同プールで公共物損壊の容疑で拘束された他の2名は、現在弁護士を選任中であることを理由に、公式なコメントを控えた。
このような事態を受けて、歴史的建造物の保存や財産法を専門とするジョージ・ワシントン大学の法学教授サラ・ブロニン氏は、訴追された人々について、その人物が損害を与えた、あるいは損害を与える意図があったことを政府が法廷で立証する必要があると述べた。ブロニン氏 は「重要な疑問の一つは、彼らが故意にその物件を損壊したかどうかという点です。そして二つ目の点は、実際に損壊させたのか、それとも損壊させる可能性が合理的に予見できたのか、ということです」と語った。ブロニン氏は、「あのプールは、ナショナル・モールにある他のあらゆるものと同様、モールの公共インフラの一部です。人々がその施設に関わることさえできないというのは、極めて奇妙な考え方であり、ナショナル・モールが象徴するもののあり方を歪曲するものです。あそこは、人々が関わり、肌で感じ、体験するためにある場所なのです」と指摘した。
最後に、現在注目されているリフレクティング・プールの論争的且つ驚異的状況は、連邦機関による通常の審査や意見公募の機会はおろか、最も重要な議会の承認を経るプロセスさえ実施しなかったトランプ政権が、「破壊行為」を主張し、証拠もなく、人々が逮捕されているということである。ジョージ・ワシントン大学の法学教授サラ・ブロニン氏が指摘している法律からの観点は、法律の専門家でなくても理解可能である。損害を与える意図があったことを政府が法廷で立証する必要があり、これは最も困難であることを示唆した。何が原因で簡単に塗料が剥げたのか、なぜ多量の藻類も浮いていたのか、これらの原因を科学的に突き止めることが難しい問題であるとは思えない。トランプ氏が主張した約76メートルのプール外壁の刃物による傷を警察や記者らがなぜ、発見できなかったのか? これも日頃から政治的ニュースを頻繁に読まない一般的な人々には単に不思議な話に思えるかもしれない。