最高裁はトランプ政権の移民政策の権限を拡大

Photo credit : Rodding USA

米国最高裁は2026年6月25日にハイチおよびシリアの市民に対する一時保護資格(TPS)を連邦政府が撤回することが可能であると判定した。加えて、同日最高裁は、メキシコ側の国境で亡命申請を求める人々が米国に入国する前に追放するというトランプ政権の亡命方針も支持した。保守派多勢の米国最高裁は、TPS指定と亡命に関する二つの訴訟における判定で、トランプ大統領の移民政策の権限を拡大する道を開いたことになる。

国土安全保障省(DHS)長官であった当時、クリスティ・ノーム氏は、TPSプログラムを解除しようとしたことで、訴訟に発展していた。最高裁まで到達したMullin v. Doe訴訟において、最高裁は6対3の評決により、連邦地方裁判所及び控訴裁判所が、DHSの撤回に対して、差し止め命令を下していた判定を覆したのである。49ページの意見書によると、一時的保護資格(TPS)プログラムは、1990年に連邦議会が制定したものである。戦争、武力紛争、自然災害、その他の異常な状況により「母国へ安全に帰国できない外国人に対し、短期的な人道的救済を提供するために、1990年にTPS指定を設置した。この規定は安全ではない国からの移民に対して、米国に滞在することことを一時的に許可した」ものである。マグニチュード7.0の地震がハイチを襲い、壊滅的な被害をもたらし、30万人以上の死者が出た2010年、当時のDHS長官ジャネット・ナポリターノ氏はハイチをTPSの対象国に指定した。

シリアはバッシャール・アル=アサドの抑圧的な政権に関連する「異常かつ一時的な状況」を理由に、2012年にTPSの対象国として指定を受けた。当時、アサド政権は反体制派に対する残忍な弾圧を行なっていたことは世界的に知られていた。2025年9月、ノーム長官は、シリアに対するTPS指定を終了すると発表した。シリア国籍の7名は、TPS打ち切りの停止を求めて、行政手続法に基づく申立てにより、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提訴した。2025年11月、ノーム長官はハイチのTPS指定も終了すると公表した。これに対し、ハイチ国籍の5名は、ハイチに対するTPS指定の取り消しは人種を理由とするものであり、憲法上の平等保護の権利を侵害したと主張した。更に、行政手続法に基づく主張を掲げて、コロンビア特別区連邦地方裁判所に提訴した。当時、この二カ国は最大18カ月間の滞在が許可されていたが、繰り返し延長されていた。

これらの訴訟に置いて、二つの裁判所はトランプ政権による両国へのTPSプログラム終了を差し止める決定を下した。その後2026年、米国最高裁に対し、トランプ政権は下級裁判所の判定を一時停止し、審理を行うよう求めた。最高裁は4月29日に口頭弁論を行い、下級審の決定を却下したのである。米国最高裁の保守派6人の判事らは、大多数が黒人であることが理由であり、憲法が保障する平等措置に違反すると訴えたハイチのTPS資格保持者らが勝訴する可能性は低いと示唆した。意見書を書いた一人であるサミュエル・アリート判事は、政府がハイチおよびシリアの国民に対するTPSを終了させる決定をしたことについて、原則として裁判所は政府の決定を審査できないと主張した。反対意見を述べたエレナ・ケーガン判事は、訴訟の現段階において、ハイチおよびシリアのTPS受給者が求めているのは単に、自らの主張を法廷で争い続けている間、この国に滞在し続けることだけであり、彼らにはその救済を受ける権利があり、破滅的かつ生命を脅かすような被害に追いやられるべきではないと主張した。ソニア・ソトマイヨォア判事とケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事が同意した。

さらに米国最高裁の保守派判事らは、トランプ政権の亡命政策を支持し、亡命を求める希望者がメキシコ国境に辿り着く前に組織的に追い返すトランプ政権の方針を認めた。Mullin v. Al Otro Lado の判例における70ページの意見書によると、2017年、亡命希望者および移民支援団体アル・オトロ・ラドは、米国カリフォルニア州南部地区連邦地方裁判所に対し、政府を相手取って、集団訴訟を提起した。彼らは、国境に到着し、米国への入国を求める外国人に対し、米国税関・国境警備局が「入国審査の受付制限」政策を運用することによって、入国審査および亡命申請手続きを違法に拒否していると主張した。サンフランシスコにある第9巡回区控訴裁判所もこの主張を認めた。しかし、25日米最高裁の保守多数派の判事らは、トランプ政権が有効な渡航書類を持たない亡命希望者を含む非米国市民が合衆国に入国する前に追い返すという措置は非市民が合衆国に到着した際に、亡命を申請することを認める連邦法に違反しないと判定した。

多数派意見を代表したアリート判事は「本件は、単純明快な問題を提起している。すなわち、メキシコから米国への入国を求める外国人が、依然としてメキシコにいる段階で「米国に到着した」と言えるか否かという点である。米国第9巡回区控訴裁判所は、この問いに対して『イエス』と判断した。しかし、その判断は誤りである。日常の言葉遣いにおいて、ある場所、例えば家、都市、あるいは国に『到着する』と言う場合、その場所に入る前にそう表現する者は誰もいないだろう。本件で問題となっている移民法規において『米国に到着する』という語句が用いられている文脈も、こうした日常的な意味での解釈を裏付けている。法の域外適用を原則として認めないという法解釈上の推定もまた、同様の結論を支持するものである。従って、我々は原判決を破棄する」と判定した。つまり、米国への到着を試みて失敗した外国人は、米国に到着したことにはならないと述べた。

最後に、TPSは母国へ帰国できない状況がある場合、特定の国の市民に対し、米国への滞在および就労を認める権限を国土安全保障省に与えたものである。25日の米国最高裁による6対3の判定は、ハイチおよびシリアのみに限定される印象もあるが、恐らくトランプ政権下では、今後他の国からのTPS申請も拒否される可能性がある。従って、25日の判定は、即時に影響を受ける数十万人に加えて、今後多くの人々がその保護資格を失う道が開かれたことになる。亡命に関する25日の米国最高裁の判定は、米メキシコ国境に到着した移民は、米国内に足を踏み入れるまでは亡命を申請する権利がないということである。つまり、非米国市民は、米国の公式入国地で書類手続きを行う必要がある。アサイラムと呼ばれる亡命は、自国で迫害や危害を受ける恐れがある人々に対する法的保護の一形態である。米国の法律では、迫害の恐れから自国を逃れてきた人々の亡命が認められた場合、米国での滞在権と保護が付与される。だだし、申請者自身は米国内に滞在している必要がある。亡命に関連する米国最高裁の判定の要点は、この米国法に基づき、非市民が亡命を法的に申請する際、物理​​的に米国の領土に入った場合に可能であり、メキシコ側または他国の国境にいる場合は亡命を申請する資格がないという簡単明瞭な点である。

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