
NYセカンド・アベニュー地下鉄 Photo credit : Bloomberg. com
2026年7月27日の主要メディアのトップ・ニュースは、議会によって提供されている億単位の大規模な交通インフラストラクチャー・プログラムの資金がトランプ政権で運用されていないということです。
ニューヨーク・タイムスの27日の報告によると、連邦政府は数十年間、公共交通機関の拡充と地域社会の交通の安全性のために、鉄道路線や駅の建設、道路の改修、近代的なバス運行などのプロジェクトを支援するため、「時には数十億ドルにも上る巨額の補助金を拠出してきた。現在、ニューヨークのセカンド・アベニュー地下鉄やシカゴのレッドラインの延長、ハドソン川の地下を通るゲートウェイ・トンネル、そしてインディアナ州インディアナポリスやテキサス州サンアントニオにおけるバス関連インフラの整備といった事業に資金が提供されている」と言います。これはCapital Investment Grants(資本投資助成金)と呼ばれるプログラム下で、連邦公共交通局(FTA)が協定を締結するというプロセスを得て、これらのプロジェクトが開始されます。しかし、現在、バイデン政権下で任期終了前の数週間に署名された6件のプロジェクトも含めて、「最終段階へ移行する準備が整っていた大規模プロジェクトは、トランプ大統領の就任以降、停滞したままとなっている。それだけではなく、現政権はニューヨークとシカゴのプロジェクトへの支払いを停止することも試みたが、その結果、裁判所が介入する事態となった」と述べています。
これまで議会は70億ドルを超える資金をトランプ政権に提供しましたが、「その目的のために割り当てた資金も滞留しており、いかなるプロジェクトにも支出の確約がなされないまま、未着手のプロジェクトが積み上がっている」中で、「主要な公共交通インフラに対する連邦政府の支援をめぐる懸念も高まっている」ようです。アメリカ交通機関のディレクター、スティーブ・デイビス氏は、「この1年を振り返ると、こうした助成金の交付が意図的に遅らされているとしか思えません」と述べた。「このプログラムは、トランプ政権による連邦資金の管理手法に見られる、より巧妙な戦術を浮き彫りにしている。それは、昨年大量に行われたような補助金の打ち切りだけでなく、新たな補助金の交付を密かに見送る」という実態があるようです。こうした不作為がある場合、「追跡は非常に困難であり、地域社会としても異議を唱えにくいものがある。補助金を求めている10以上の交通機関や地方自治体は数百万ドル規模の補助金がかかっているため、不用意な発言で政権の怒りを買うことを懸念し、取材を拒否したり、このプログラムに関するコメントを控えたりした」と伝えています。
公共交通機関を管轄する部局を含む「交通省は声明の中で、各プロジェクトは法律で定められた多段階の助成金手続きの過程にあると述べました。また同省は、ワールドカップ開催都市への資金提供や、公共交通機関に対して犯罪の削減を促す監督業務など、他の形でも公共交通機関を支援してきた」と言います。しかし、「特定のプログラムの助成金が未使用であるという状況は、本来なら実現していたはずの特定の施設や設備が作られなかったことを意味する。例えば、エレベーターがない地下鉄駅、迅速な移動を可能にする専用レーンが整備されていないバス路線、十分な本数の列車を運行できない通勤鉄道」などが挙げられます。2000年代、米下院の運輸・インフラ委員会に勤務したユタ州ソルトレイク商工会議所の会頭兼CEOを務めるデレク・ミラー氏は「資金をプロジェクトに確実に届けることができないような仕組みというのは、私には到底容認しがたいものです」と言います。
全米公共交通機関協会(APTA)で政府関係・政策提言担当副会長を務めるウォード・マッカーラガー氏は「懸念されるのは、合意文書への署名がないまま18ヶ月が経過しているという点です」と述べました。同氏によれば「助成金を申請している10のプロジェクトについては、すでにFTAの内部会計上で必要な資金はすべて確保されている。その中には、サウス・キャロライナ州チャールストンでのバス高速輸送システム向けに3億7,500万ドル、ロスアンゼルスおよびオハイオ州コロンバスでのバス関連プロジェクト向けにそれぞれ1億5,000万ドルなどが含まれているようです。しかし、「FTAによる技術設計案、環境影響評価、利用者数やコストに関するデータ、そして地元による資金拠出の確約といった事項の審査が完了するまでは、各地域がその資金に依存することはできない」ようです。「プロジェクトはこうした審査に何年も費やし、中には最後までたどり着けないものもある。合意文書に署名がなされるまでは、資金の提供は一切保証されない」システムになっています。
アーバン・インスティテュートの研究員ヨナ・フリーマーク氏は、「計画の遅れや補助金の不履行によって最も大きな打撃を受けるのは小規模な地域社会だろうと指摘している。こうした地域には、公共交通機関の財源となる専用の税収や、不足分を補う州の支援プログラムがない場合もある。現在進行中の46のプロジェクトの多くは、大河の地下にトンネルを掘るような大規模なものではなく、バス高速輸送システムの導入に向けて5,000万ドルから1億5,000万ドルの資金を求めているものである。ワシントン郊外にあるメリーランド州モンゴメリー郡の郡議会議長ナタリ・ファニ・ゴンザレス氏は、「地域社会が自力でこうした変革の費用を賄うことなど、到底不可能です」と述べています。
最後に、交通プロジェクトに対する議会が提供した予算が、関係機関に提供されておらず、全米の各地で、老朽化した鉄道、地下鉄、バス高速輸送システム、駅の階段、道路や橋などの修理に予定されているインフラストラクチャーにかかる予算が供給されていないという新たな発見は、特に驚くことではありません。2025年1月20日にトランプ大統領が就任して以来、イーロン・マスクが主導した政府効率化省(DOGE)は多数機関の予算を削減し、政府職員を大幅に解雇しました。従来、研究のために資金が提供されていた幾つかの高度教育機関は補助金を巡り、法的紛争にまで発展しました。ハーバード大学は長期的な戦いを続けました。公共ラジオ放送のNPR、PBSは補助金停止のために、一時閉鎖に至りましたが、その後連邦裁判所は、資金提供の停止を命じた政権の特定の大統領令を違憲であると判定しました。このような例を考えると、「新たな補助金の交付を密かに見送る」という事態は現政権下では不思議ではありません。しかし、インフラの取り組みが放棄または延期される事態は、交通システムの安全性に懸念が生じるだけでなく、近代化は益々遅れることになります。新幹線一つを例に上げても、他国より遥かに車社会である米国の鉄道システムは第三国のような側面があり、日本の近代的な新幹線と比較すると、米国はかなり遅れています。第一期目のトランプ政権は、予算をオバマ政権およびバイデン政権とほぼ同様のレベルで利用しました。しかし二期目は、議会が予算を提供しているにもかかわらず、資金は保留されていますので、結果的には、米国を優先するとのキャンペーン中の公約とはかけ離れたものの一つになることを意味します。交通システムの改善による米国市民への安全性が懸念されている状況が18ヶ月間続いているということは、関係者が「助成金の交付が意図的に遅らされている….」および「到底容認しがたいものです」と公的に批判するほど、その苛立ちは限界に達していることを示唆しています。