
Photo credit : The New York Times
China and the U.S. Offer Competing Showcases of Global Power
The New York Times : 2026年9月1日
この記事はノース・キャロライナ州山間部のアッシュビルで8 月29日から9月1日まで開催されているG20サミットの場が、米国、欧州、ロシア/中国/イランの対照的な変化を浮き彫りにしたことについて述べています。専門家は、中国がグローバル・リーダーの役目を担うことを目指していると分析しています。しかし、欧州と米国はいずれも中国に対する経済制裁の圧力を緩める気配はありません。このサミットは、米国がロシアを財務相/中央銀行総裁会議に招待したことで、欧州当局者を激怒させることになりました。
中国の習近平国家主席は、今週、キルギスの首都ビシュケクでロシアやイランとの首脳会談を行いました。この安全保障サミットで、中国は「安定の源であり、米国主導の現行の秩序に取って代わる『秩序ある多極的世界(orderly multipolar world)』の推進者である」との結束をアピールしました。キルギスでの首脳会議の合間に行われた会談で、インドのナレンドラ・モディ首相は、プーチン氏に対し、「人類」のためにウクライナでの戦争を終わらせるよう促しました。ロシア国営メディアは、プーチン氏がモディ氏に対し、ロシアは「その方向に向かって動いている」と語ったと伝えました。
パワフルな国の指導者らが参加したノース・キャロライナ州アッシュビルで開かれたG20では、「亀裂の深さを印象づける」ものとなりました。上海協力機構の首脳会議において習近平氏はキルギス、モンゴル、ウズベキスタンの各首脳と会談したものの、ロシアのウラジミール・プーチン大統領との会談は極めて重要な意味があった。習氏はプーチン氏に対し、「中露関係の基盤は今後ますます強固なものとなるだろう(The foundation of China-Russia relations will become ever stronger)」と語りました。そのわずか数日前、CIA(米中央情報局)の長官ジョン・ラトクリフ氏は、モスクワを極秘に訪問し、ロシア政府に対し、ウクライナでの戦争を終結させるよう促していました。ロシアはG 20のメンバーですが、欧州の当局者らは、主要20カ国地域の財務相/中央銀行総裁会議に出席し、ウクライナとの戦争を続けているロシアをトランプ政権がこの会議に招待したことに対し、今週、強い憤りを表明した(expressed outrage)。ドイツの副首相兼財務相のラース・クリングバイル氏は、G20の場で記者団に対し、トランプ政権がロシアのアントン・シルアノフ財務相を招待したことは「懸念すべき事態(troubling)」であると述べました。クリングバイル氏は、9月1日の会合で、ロシアによるウクライナでの戦争をめぐりシルアノフ氏を厳しく、問い詰めたと語りました。また、多くの欧州関係者は、米国財務省がG20の長年のメンバーでありアフリカ最大の経済国でもある南アフリカの代表者を招待しなかったことに対しても、憤りを露わにしました。
米国財務長官スコット・ベセント氏は、「カナダは米国と貿易戦争を戦うには規模が小さすぎる」と主張しました。また「当局者らは、米国・イスラエルとイランとの間の紛争がもたらす経済的余波にも直面し(confronting the economic fallout)ていた。この紛争は石油の供給を滞らせ、世界のエネルギー価格を押し上げるとともに、経済成長を減速させる恐れを生じさせていた。同時多発的に行われた複数の集会(The simultaneous gatherings happening)は、世界秩序の次なる局面(the next phase of global order)を誰が定義するかをめぐる、より広範な争いを反映するものでした。中国は、西側諸国と対立するロシアやイランとの連帯を利用して影響力を誇示し、それによって、今月後半に予定されるトランプ氏との首脳会談に向けた交渉のカードを手にしました。一方、米国は、数十年にわたり同国の世界的な指導基盤を支えてきた同盟関係や経済的結びつきに、緊張をもたらしていました。」元職業外交官であり、現在、ブルッキングス研究所に所属するホワイトハウスの元国家安全保障担当のライアン・ハス氏は「国際政治の秩序を自国に有利な方向へ変えようとする中国の戦略は、『世界の多数派』からの支持を集めること(to amass support)にあります。だからこそ、習氏がこうした枠組みに参加することが、中国にとって極めて重要なのです。それは、世界の舞台でより中心的な役割(a more central role on the world stage)を担うための支持を拡大し、中国が勢いを強めてしている(China gaining momentum)という説話を構築する(builds a narrative)ことにつながるからです」と述べました。
G20首脳会議には、イランのマスウード・ペゼシュキアン大統領も出席しました。イランのメディアは、同大統領が会議の合間に習氏と会談したと報じましたが、公式な会談の予定は組まれていなかったようです。しかし、プーチン氏はイランの大統領と会談し、国益のために戦うイラン国民の「勇気と不屈の精神(courage and resilience)」を称賛しました。同氏は、米国との対立が続く中、ロシアがテヘラン(イラン政府)を支援していることを強調しました。 プーチン氏は、「こうした困難な時期に、我々は必要な支援を提供しようと努めています」と述べ、「あなた方と協議した上で、必要な物資を供給しています(are supplying you with the necessary goods)」と語りました。これに先立ち、プーチン氏は上海協力機構において新たな権力の中核が確立(the consolidation of a new power center)されていることを評価し、同機構を「台頭する多極化世界における、独立した影響力のある中心の一つ(one of the independent and influential centers of the emerging multipolar world)」と呼びました。同氏は、その加盟国(Its member countries)が世界人口のほぼ半数(almost half of the planet’s population)、および世界のGDPの3分の1以上を占めていることにも言及しました。
一方、米国は、歴史的な同盟国から孤立しているようであり(appears to be drifting away from its historical allies)、世界のリーダーシップを誇る能力を弱体化させているようです。カナダとの間で貿易戦争を開始し、韓国との軍事演習を削減し、イラン情勢への対応で武器や弾薬を消耗し、世界各地における防衛上の責務(its defense commitments)を果たせなくなるのではないかという懸念も高まっていると言います。なぜなら、トランプ氏がワシントンのパートナー諸国を遠ざける(is presenting by alienating Washington’s partners)ことで、中国に好機を生み出しているからです。中国外務省に助言を行う上海・復旦大学のアメリカ研究の専門家、呉心伯(ウー・シンボー)氏は、中国は喜んで機会を捉えよう(is happy to seize the opportunity)としている。G20会合にも参加した中国には二つの狙いがあると述べた。それは、米国が単独で議題を主導できない(the United States could no longer dictate the agenda alone)ような合意を形成すること、そして世界経済の牽引役としてより大きな役割を担うことである。シンボー氏は、「米国のエンジンが勢いを失い(the American engine is losing steam)、さらにはマイナスの副作用さえ生じさせている(even generating negative side effects)今、中国は経済のエンジンとして、世界経済の成長を牽引および主導する上で、より大きな役割を担わなければならない」と述べた。世界の政治情勢が分断しつつある分断が生じつつある中で、両陣営に働きかけようとする習氏は、今年から、世界の広範な外交攻勢の一環(As part of a broad diplomatic offensive)として、ドイツ、英国、カナダなどの首脳を相次いで迎えているようです。今後、カイロを訪問するほか、ニューデリーで開催される中国やインドが主導する新興国グループ(a group of emerging economies)の首脳会議にも出席する予定です。
トランプ大統領は5月中国を訪問した際、貿易戦争における対立を休止すると公約しました。しかし、トランプ政権は中国製ロボットの輸入禁止や、イラン産原油を輸入する中国企業に対して、制裁を拡大することで圧力をかけ続けています。加えて、米国のAI(人工知能)モデルからデータを収集する(collect data from American AI)中国のAIモデルを規制すると警告しており、中国のAI分野での進展を抑える動きもあります。ニューヨーク・タイムスが入手した国務省の書簡によると、同政権は数十カ国に対し、中国主導のAI構想に参加すればパックス・シリカ(Pax Silica)と呼ばれる米国主導のAI連合から排除される恐れ(risk being shut out of)があると警告する準備を進めています。しかし、その書簡が実際に送付されたかどうかは明白ではありません。加えて、中国は欧州からの潜在的な貿易制限(potential trade restrictions)にも直面しています。ブリュッセルの政策立案者らは、電気自動車、ソーラーパネル、工業用化学品など、中国製品の大量流入、数万人規模の雇用喪失を加速させている事態に歯止めをかける(trying to slow the deluge of Chinese products)よう試みています。
最後に、米国が主催した9月1日のG20サミットの様子は、中国が分断されている世界のパワーの仲裁者になること、世界経済の中心的なリーダーシップを発揮する意欲があることを示唆しました。これは、米国大統領の世界に対する姿勢の変化によって浮き彫りになっているリーダーシップの空白を埋めようとする中国が国益を精力的に追求する計画的な外交戦略を用いたとされています。世界で米国の影響力が衰えている機会を利用して、習近平氏は米国の議題を頓挫させるために自らの影響力を積極的に行使したことを明白にしました。また、中国は、世界的な貿易不均衡、サプライチェーンの制約に言及する西側諸国の主張にも否定的な態度を示しました。西側諸国の合意は、同盟国間の混乱によって亀裂し、米国の議題はさらに弱体化したことを示唆しました。専門家は、米国の制度的統制力が低下している兆候であると指摘しています。それらの要因は、カナダに対する貿易戦争、米国が南アフリカを排除したこと、ロシアのアントン・シルアノフ財務大臣をトランプ政権が招待したことで、欧州の当局者は、米国側の主催者と公然と対立し、公式の集合写真への参加を拒否しました。加えて、今回のG 20首脳会談は、中国の習近平国家主席が米国の圧倒的な優位の時代が終わったことを世界に印象付けるための絶好の機会となりましたが、欧州は、米国と激しく対立する結果となりました。